2016/07/08
2016年7月8日掲載
再生可能エネルギーの普及進めるインドネシアでは水力発電の設備容量を、現在の約4000MWから2028年には1万5000MWに増強する計画を掲げている。同国で50年以上にわたって水力発電設備の設計監理に携わってきた日本工営は、現地法人を通じて今年の夏から同国のFITを活用した水発電事業に本格的に乗り出す。
[長町基,スマートジャパン]
電力・公共社会基盤整備などの総合建設コンサルタント事業を展開する日本工営(東京都千代田区)のインドネシア現地法人が、このほどジャワ島で水力発電施設の建設に着手した。
西ジャワ州チカエンガン川で小水力発電の開発権を持つインドネシア現地法人の Cikaengan Tirta Energi(以下、チカエンガン社)は、インドネシアの国有電力会社であるPLNと売電契約を2016年5月に締結。これに合わせてチカエンガン社は水力発電施設の建設を開始するなど、インドネシア版FIT(固定価格買取制度)を適用した売電事業に本格的に乗り出す。
水力発電設備の建設場所はバンドン市の南東約90kmに位置する西ジャワ州ガルット県。設備容量の合計は約7.2MW(メガワット)で、出力3.59MWの横軸フランシス型水車を2基設置する。発電方式は流込み式で、1秒当たり8.2立方メートルの水量と101.6メートルの有効落差を利用して発電する。設備利用率は74%、年間発電量は46.7GWh(ギガワット時)を見込んでいる。
同事業では、日本工営グループが水力発電施設の施工監理を行うことで事業費節減に努め、水車・発電機など設備の一部についてリースファイナンスを利用することでリスク分散を図る。
同社は中期経営計画で「新事業の創出と拡大」を基本方針の1つとしており、小水力発電だけでなく太陽光発電、地熱発電など長期的な成長が見込める再生可能エネルギー発電事業への投資を検討している。同事業は日本工営グループ第1号の海外水力事業案件となる。将来的には水力IPP(Independent Power Producer)事業のグローバル展開を視野に入れている。
インドネシアでは増大するエネルギー消費に対し、省エネと再生可能エネルギーの利用促進が課題となっている。さまざまな再生可能ネルギーの中でも、特に水力発電の導入ポテンシャルは大きいとされており、普及に期待がかかっている。同国では現在の水力発電容量約4000MWを、2019年に6300MW、2028年には1万5000MWに増強する計画である。
日本工営は50年以上にわたってインドネシア水力発電事業の計画・設計・施工監理を行ってきた。その実績と同国における降水量や河川流量、地質などに関する知見を生かし、引き続きインドネシア国電源開発に貢献してく方針だ。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1607/08/news036.html
2016/07/08
2016年7月8日掲載
日本工営株式会社(以下、日本工営)は、インドネシアにおける小水力発電事業を本格的に始動したことを2016年7月1日に発表した。
小水力発電事業
インドネシア国ではインドネシア版FIT(Feed-in Tariff、固定価格買い取り制度)により小水力発電事業への注目が高まっている。同国は水力発電容量を現在の約4,000MW(メガワット)から2028年に15,000MWまで増強することを計画している。
同社はインドネシア水力発電事業に1960年代から関わり、発電施設の計画・設計・施工監理に取り組む中で、同国の降水量や河川流量、地質などの知見を蓄積してきた。
インドネシア版FITを適用
このたび、日本工営のインドネシア現地法人、PT.Cikaengan Tirta Energi(チカエンガン社)が同国国有電力会社と売電契約を締結し、FITを適用した売電事業に乗り出すことになり、チカエンガン社は、6月29日、小水力発電の開発権をもつ西ジャワ州チカエンガン川の水力発電施設の建設に着手した。
このチカエンガン小規模水力IPP(Independent Power Producer)事業の発電形式は純粋流れ込み式で、横軸フランシス型水車2基を設置した設備容量は7.2MW、年間46.7 GWh(ギガワット時)の売電量を見込む。
日本工営グループが施工管理を担当してコストを抑えるとともに、水車や発電機などにリースファイナンスを活用してリスクを分散している。
今後、同グループは水力IPP事業のグローバル展開を想定しており、今回の事業を第1号の海外水力事業案件ととらえている。
2016/03/01
2016年3月1日公開
2015年12月、絶滅の危機にあるスマトラトラやスマトラサイが生息するスマトラ島ブキ・バリサン・セラタン国立公園に隣接した小さな村で、森から流れる川を利用した、7機の小水力発電機が設置されました。村の住民は、この川の流れを維持するため、流域の森林を開発せず、長期にわたって保全することに合意。国立公園の森と希少種の保全につながることが期待されています。WWFでは今後、この事例を他の地域に広げる取り組みを目指しています。
森を守る、クリーンで安価な電力
インドネシア スマトラ島の南東部に位置するブキ・バリサン・セラタン国立公園は、スマトラサイやスマトラトラをはじめとする絶滅危惧種の貴重な生息域であり、ユネスコの世界自然遺産「スマトラの熱帯雨林」の中心的なエリアの一つにも指定されています。
しかし、同国立公園では、違法な農園開拓による森林伐採が進行しており、2011年には世界遺産危機リストに掲載され、ユネスコから森林保全・回復の改善策に取り組むよう勧告されています。
こうしたことから、WWFでは、これまでブキ・バリサン・セラタン国立公園の森林と絶滅危惧種を保全するための活動を支援してきました。
そして、2015年1月、国立公園に隣接するスカ・バンジャール村で、住民に自然エネルギーを供給することで、地域主体の森林保全を促す、新たな取り組みを開始しました。
このプロジェクトは、森から流れる川を利用した小水力発電機を設置することにより、住民約100世帯にクリーンな電力を供給することを目的にしています。
自然エネルギーによる小水力発電は、これまで村で使われてきたディーゼル発電機の燃料(軽油)を定期的に購入するよりもメンテナンスの費用が安く、住民の経済的な負担を抑えられる上、温暖化の原因になる二酸化炭素の排出を抑えることにも貢献します。
そして何よりも、小水力発電機を長期間にわたり持続的に使用していくためには、流域の森林を保全し、川に泥が流れ込んで堆積するのを防ぐことが欠かせません。
こうしたことから、WWFではプロジェクトの開始にあたり、スカ・バンジャール村の住民の方々に小水力発電の利点と、住民が自ら森林保全に取り組む必要性を説明しました。
スマトラ島固有亜種のスマトラトラ。推定個体数は300頭ほどといわれる。
スカ・バンジャール村の位置図
小水力発電機の設置に向けて
プロジェクトでは、まず村内のどこに森林が残っているのかを把握するために、衛星画像の分析と現地調査を実施し、村の土地利用図を作成しました。
その結果、村の南部はパーム農園や水田に転換されているが、国立公園に隣接する北東部には比較的森林が残されていることが判明。
まずは、村の北東部を流れるタタサン川とシリンバラック川に5~10kwの小水力発電機を4機と3機設置することに決定しました。
そして、発電機ごとに受益世帯をグループにし、それぞれから発電機の管理や運営を担う委員長と書記、経理の3名を選出してもらいました。
これらグループのメンバーは、特別に発電機の技術研修と組織の運営研修を受け、発電機の操作方法や、メンテナンスのための徴収額の設定方法、財務記録の作成・保管方法などを学びました。
また、発電機の設置にあたっては、各世帯が流域の森林を農地に転換せず、川の源流を保全することで、小水力発電に必要な水質を維持することに合意。
その内容は文書化され、各世帯と村長、コミュニティ組織の委員長の3名が署名し、村全体として森の保全に取り組む意志を明らかにしました。
この文書には、これらの合意事項に違反した場合、小水力発電の使用資格を失うことなども含まれています。
設置された発電機
116世帯にクリーンな電力を供給!
9か月にわたる事前調査と準備を経て、2015年10月に小水力発電の設置作業が行なわれました。
小水力発電では、通常の水力発電のように大規模なダムは建設せず、川の一部せき止めて、そこから川をバイパスする水管へと取水し、タービンに水を流し込むことで発電します。
こうした堰の建設や水管・発電機の設置作業は、各グループのメンバーが協力して実施。
そして12月、雨期で川の水量が増す前に、全7機の発電機の設置が完了し、計画を上回る116世帯にクリーンな電力を供給することができました。
また、発電機の運用・管理は、各グループで決めた曜日毎の担当者が実施。定期的な発電機の点検と取水口の掃除を行なっています。
今後プロジェクトでは、森の保全につながるスカ・バンジャール村の取り組みを、ブキ・バリサン・セラタン国立公園周辺の他の地域に広げてゆくため、このプロジェクトを題材とした動画や手引きを作成し、周辺の村落や政府機関に配布する予定です。
さらに、県知事や国立公園長を招いたシンポジウムの開催も計画しています。
発電機は村の人たちが協力して設置
スマトラ島の森を守るために、日本の消費者に求められる行動
ブキ・バリサン・セラタン国立公園をはじめ、スマトラ島の国立公園で起きている違法伐採や違法な農園開拓は、日本とも深いつながりがあり、問題解決のためには、日本の消費者にも行動が求められています。
スマトラ島における森林破壊の主な原因は、オイルパーム農園の開拓と紙・パルプ用の人工植林であり、こうして生産されたパーム油や紙は日本にも輸出されています。
パーム油は、日本の消費者が直接目にする機会は少ないですが、チョコレートやカレールーの一部、スナック類やインスタント麺の揚げ油、石鹸や化粧品の原材料など、身の回りの様々な商品に使われており、パーム油なしで日常生活をするのは不可能なほど広範に利用されています。
また、日本で使用されるコピー用紙の3分の1がインドネシアで生産されたものです。
日本で使用されているパーム油や紙の中には、破壊的な大規模伐採の跡地で生産されたものも含まれており、日本の消費者がこうした商品を購入することで、知らず知らずのうちにスマトラ島の森林破壊に加担している可能性があります。
しかし、消費者個人が商品やその原材料の生産方法まで遡って、追跡するのは困難です。
そこで、環境破壊的な方法で生産された商品の購入を避けるために、最も簡単で効果的な方法は、「RSPO認証」や「FSC認証」が付いた商品を購入することです。
これらの認証は、パーム油や林産物が環境、社会、経済的に持続可能な方法で生産されたことを証明する国際的な制度です。
日本の消費者がRSPO認証やFSC認証が付いた商品を意識的に選択することで、スマトラ島の破壊的な森林伐採に対して厳しい態度を示し、持続可能な生産を支援することになります。
WWFは、今後もスマトラ島の現場で森林と絶滅危惧種の保全に取り組むと同時に、日本の企業や消費者に対して、環境に配慮して生産された原材料の購買・調達を働きかけていきます。
※この小水力発電の設置プロジェクトは、トヨタ自動車株式会社のトヨタ環境活動助成プログラムの助成を受けて実施しています。
アブラヤシのプランテーション