2016/09/25
2016年9月25日掲載
環境省は全国の水道施設を対象に小水力発電の導入可能性を調べ、2015年度に少なくとも563地点で発電出力19メガワット弱の潜在能力があることが分かった。全国の自治体など1888事業者にアンケートを送付し、回答があった1536事業者の中から導入可能性の高い895地点を抽出。協力を得られた563地点について流量・水位や設備状況など詳細な情報を収集し、整理・分析した。
合計の発電潜在能力は1万8742キロワットで、563地点のうち274地点が出力20キロワット以上だった。全体の年間発電電力量は1億5847万キロワット時になり、二酸化炭素(CO2)9万2000トン分の排出削減効果が見込まれるという。
水道施設には導水・配水などの圧力差を、小水力発電に生かせる箇所が散在している。全国の水道事業者が消費する年間電力量は約74億キロワット時で、電力需要全体の約0・8%を占める実態もあり、環境省は13年度から水道施設への太陽光発電なども含めた再生可能エネルギー、省エネ設備導入を推進する施策を展開。
だが、小水力発電を導入している水道施設の割合は現状で全体の2・7%にとどまっている。
下水処理場に眠る埋蔵エネルギー
下水処理場に眠るエネルギーを活用しよう―。水処理設備やエネルギー関連機器を手がける機械メーカーが、下水処理中に発生するエネルギーの有効利用に寄与する技術の開発や普及に挑んでいる。一方で処理にかかる電力消費の低減が課題となっており、IoT(モノのインターネット)を駆使して省エネを後押しする技術革新にも取り組む。
2011年の東日本大震災発生以降、節電意識の定着や再生可能エネルギーの利用推進に伴い、いかにエネルギーを生み出すかは下水処理場でも大きな課題だ。バイオマスである下水汚泥は重要なエネルギー資源で、15年には下水道法の一部改正により汚泥を燃料や肥料として再生利用するよう下水道管理者に努力義務が課せられた。
バイオガスの3割は未活用
汚泥の処理過程で発生する消化ガス(バイオガス)の約3割は活用されていないとされる。こうしたエネルギーの有効活用に向け、ヤンマーエネルギーシステム(大阪市北区)はバイオガスを燃料とする小型コージェネレーション(熱電併給)システムの導入を促進。出力25キロワットの発電機と付帯装置、配管やポンプ、補機類を20フィートコンテナに内蔵したシステムを開発。改良を重ね年内に発売する。
同社は下水処理場向けでトップの納入台数を誇る。「下水処理場はエネルギーの宝庫」(林清史営業統括部エンジニアリング部ソリューショングループ部長)とし、設置が簡単で工事期間の短縮や手間の軽減が可能な新システムで「小規模の処理場への提案を加速していきたい」(同)考えだ。同社は自治体の要望にも応え、出力300キロワットの中型機を15年10月に発売。下水処理場からの引き合いも増えているという。
「民設民営方式」で20年間の発電事業
月島機械は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を利用した消化ガスの発電事業を1日に大阪市内の下水処理場で始めた。大阪ガス子会社のOGCTS(大阪市中央区)やグループの月島テクノメンテサービス(東京都江東区)と組み、民設民営方式で20年間の発電事業を行う。
処理場にはヤンマーエネルギーシステム製の出力25キロワットのコージェネシステム30台を設置。発電能力は750キロワット、年間発電量は約550万キロワット時を見込む。発電に伴う廃熱は消化槽の加温に利用する。月島機械グループとOGCTSは今後同市内の処理場3カ所でも消化ガス発電事業を計画し、4カ所合計で4090キロワットの発電能力、年間約2580万キロワット時の発電を想定する。
下水処理場で使われる電力は国内全体の年間電力使用量の約0・7%を占めるとされ、処理場での消費エネルギーの抑制も重要だ。国土交通省が14年に定めた「新下水道ビジョン」では、下水道で消費するエネルギーを約1割削減する目標を掲げている。
省エネ技術と組み合わせ
下水道施設の中でも電力消費が大きい水処理の工程で省エネ技術の開発に乗り出したのはクボタだ。東芝と共同で、膜分離活性汚泥法(MBR)を用いた下水処理システムの電力使用量の削減を目指す。高度処理に使われるMBRシステムは従来の重力沈降による活性汚泥法に比べ設置スペースを取らず、水質の高い処理が可能。既設設備を収容する土木構造物を活用できるため老朽化設備の改築・更新に有用で、小規模の処理場を中心に導入されてきた。
ただ、膜分離装置や反応タンクに空気を供給する送風機の電力使用量が水処理施設全体の9割以上を占めており、中規模・大規模の処理場に普及させるためには電力使用量の削減が不可欠だ。
そこで東芝のビッグデータ(大量データ)解析技術を利用し、各下水処理場の運転状況に応じて供給する空気の量を制御する技術を確立し、膜分離装置との組み合わせにより年間電力使用量を従来比50%削減する計画だ。名古屋市内の処理場で実証実験を進めている。
メンテナンス性の高さが重要に
日立造船は撹拌(かくはん)状態を維持したまま空気供給が可能な装置「ドラフトチューブエアレーター(DTA)」で省エネを提案する。同社は日本下水道新技術機構の省エネ型反応タンク撹拌機の導入促進に関する共同研究に参画し、研究成果は技術マニュアルで紹介された。
新明和工業も10月に発売する現行比最大40%の使用電力削減が可能な水中ミキサーや、従来の水中モーター撹拌機に比べ低動力の縦型撹拌機で省エネを促進する。同撹拌機は反応タンクの上部に駆動装置を設置して保守点検をしやすくした。
財政面の制約に加えベテラン職員の退職など人手不足から「メンテナンス性が高い装置が重宝されている」(小森勲流体事業部事業企画部担当部長)とし、こうしたニーズへの対応を強化しつつ更新需要を取り込む。
(文=大阪・窪田美沙)
2016/09/23
2016年9月23日掲載
小規模な水力発電を全国の水道施設に導入すれば、年間50億円以上の売電収入になることが、環境省と厚生労働省の調査で分かった。現在、小水力発電を導入している水道事業者は、全国で3%にすぎない。今回の調査結果は、水道事業者が小水力導入を検討するうえで参考になる。
小水力発電事業は、上下水道施設のほか、河川や砂防ダム、農業用水路、ダムの放流口などで、水の落差と一定の流量のある場所であれば導入できる。特に水量が安定している水道施設は、小水力発電を導入できる可能性が高いと言われている。
水道のなかでも導水、送水、配水施設では、標高の高い場所から低い場所へ水を流す場合に、その圧力差がエネルギーとして利用されずに失われている例が多い。例えば、ダムから取水して浄水場に導水するケースなどだ。落差によって生じる高い水圧を抑えるために、途中に配水池を設けて、圧力を抜いている。
厚生、環境の両省が水道施設における小水力発電の導入可能性を調査したところ、全国1500以上の水道事業者が持つ施設のうち、発電が可能な候補地は563カ所あった。発電出力の総量は1万9000kWに上る。
電力量に換算すると年間1億5800万kWh。総務省の統計では、1世帯が1年間に使用する平均電力消費量は5000kWh弱なので、3万世帯ほどの電力を賄える量だ。
全量を再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づいて売電した場合、2015年度の水力発電の調達価格を用いると、年間54億円になる。
将来は20kW未満でも導入可能に
両省はさらに、既存の発電技術で採算が合うとされる20kW以上の出力のある場所を詳細に調査。その結果、全国で274地点あることが判明した。
ただし近年では、20kW未満しか発電できない候補地でも、小水力発電を導入できるような技術開発が進んでいる。例えば、環境省が13年度から試験的に導入している「管路用マイクロ水力発電システム」はその一つだ。
安価な磁石や汎用性の高いポンプを使って、部品を標準化することでコストを低減。そのほか、発電機と制御装置を一体化して、配管上に配置できるコンパクトな発電機が開発されている。
既に富山県南砺市の森清配水池や福島県相馬市の大野台浄水場、神戸市水道局の福谷中層配水池などで実証実験を開始。10kW以下の超小型のマイクロ水力発電システムの開発を目指し、研究を進めている。
国や都道府県認可の水道事業者は、全国に1800以上いる。環境省は厚労省と連携して16年度に、「上水道システムにおける省CO2促進モデル事業」に予算24億円を計上した。水道施設の小水力発電を後押ししている。
真鍋 政彦 [日経コンストラクション]
2016/09/20
2016年9月20日掲載
環境省は全国の水道施設を対象に小水力発電の導入可能性を調べ、2015年度に少なくとも563地点で発電出力19メガワット弱の潜在能力があることが分かった。全国の自治体など1888事業者にアンケートを送付し、回答があった1536事業者の中から導入可能性の高い895地点を抽出。協力を得られた563地点について流量・水位や設備状況など詳細な情報を収集し、整理・分析した。
合計の発電潜在能力は1万8742キロワットで、563地点のうち274地点が出力20キロワット以上だった。全体の年間発電電力量は1億5847万キロワット時になり、二酸化炭素(CO2)9万2000トン分の排出削減効果が見込まれるという。
水道施設には導水・配水などの圧力差を、小水力発電に生かせる箇所が散在している。全国の水道事業者が消費する年間電力量は約74億キロワット時で、電力需要全体の約0・8%を占める実態もあり、環境省は13年度から水道施設への太陽光発電なども含めた再生可能エネルギー、省エネ設備導入を推進する施策を展開。だが、小水力発電を導入している水道施設の割合は現状で全体の2・7%にとどまっている。
2016/09/13
2016年9月13日発表
環境省と厚生労働省は、平成27年度に全国1,500以上の水道事業者などを対象に、水道施設における小水力発電の導入候補地の選定や導入規模などを調べる”ポテンシャル調査”を実施しました。当調査で得られた「流量」、「落差」などを基に試算を行い、有効な発電電力が得られると判断されたところに対して、追加調査を実施し、将来的に導入した場合の利点や導入における課題などを記載しました。
1.背景
水道施設(おもに導・送・配水施設)で、標高の高い場所から配水池等へ水を流す場合などには、その圧力差がエネルギーとして利用されずに失われています。
これらのエネルギーを有効活用する小水力発電を導入することにより、二酸化炭素の排出量が削減されるとともに水道事業におけるエネルギーコストの低減による経営の効率化につながるものと考えられます。しかしながら、現在、小水力発電を導入している水道施設は全体の2.7%と低い状況にあります。
また、環境省では、平成25年度から3カ年の委託事業として、従来の小水力発電と比較し、より低コストで高効率、コンパクト化を主眼においた「管路用マイクロ水力発電システム」を開発し、富山県南砺市と福島県相馬市で、実証実験を経て実用化に至っています。
今後、小水力発電の導入が大幅に拡大することが期待されるため、全国における導入ポテンシャルを算定し、水道事業者などが小水力発電の導入検討を行うにあたって参考となる事項について調査を実施することになりました。
2.調査の概要
(1)調査概要
上水道に関する全施設を対象としたアンケート調査(一次調査)を実施し、その結果を基に導入可能性の高い施設について二次調査を実施しました。
■ アンケート調査(一次調査)
・調査対象 国および都道府県認可の全水道事業体
・調査事業者数 1,888事業者
・集計事業者数 1,536事業者
・調査内容 保有施設に関する調査と意向調査を行う。
■ 二次調査
・調査対象 一次調査の調査結果を基に、小水力発電の導入ポテンシャルを算定し、算定の結果、ポテンシャルが20kW以上となる施設を保有する水道事業体
・調査事業者数 371事業者
・集計事業者数 275事業者
・調査内容 施設情報等の収集、実流量・水位に基づく発電出力の算定、想定発電電力量の算定、導入効果の試算、施設カルテの作成
(2)調査結果
発電ポテンシャルを有する導入候補地として抽出した全国563カ所について詳細調査を実施した結果、発電出力の総量は約19,000kWであり、発電出力が20kW以上の地点は全国で274地点であることを確認しました。
表-1 水道施設への小水力発電 導入ポテンシャル調査
(二次調査結果集計(ブロック別))
(表については転載元にて閲覧ください)
2016/08/30
2016年8月30日掲載
環境省は、平成28年度環境技術実証事業のうち中小水力発電技術分野において、実施中の本年度の実証試験対象技術の2次募集に係る説明会を9月6日(火)に開催する。
説明会では、技術分野の実証試験の概要や実証対象技術の応募方法に関する説明を行う。2次募集の応募受付期間は9月9日(金)17:00まで。なお、応募に当たって説明会への参加は必須条件ではない。
2次募集の概要
●募集する実証対象技術
平成28年度環境技術実証事業のうち中小水力発電技術分野で取扱う技術は、「水の位置エネルギー等を活用し、渓流、河川部、排水路などの流量と落差を利用して小規模、小出力の発電を行う技術等」とし、おおむね出力100kW未満のものを対象とする(100kW以上の水車については電気学会電気規格調査会標準規格(JEC-4001)が適用されている)。
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