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2016/11/15

小水力発電 水道で1万9000キロワット可能【毎日新聞】

2016年11月15日掲載

  CO2削減効果は9万トン 普及拡大に期待

 全国の水道施設で小水力発電を導入した場合、1万9000キロワットの電力を生み出せ、約3万世帯分の電力を賄えることが、環境省と厚生労働省の調査で分かった。全量を売電すると約53億5000万円になり、9万2000トンの二酸化炭素(CO2)削減効果があるという。小水力発電は、大規模な開発・工事を伴わず、太陽光や風力発電に比べて効率的、安定的に発電できる。特に水道水は不純物が少なくメンテナンスも容易なため、環境省は普及拡大に力を入れていく。
 調査は全国1888カ所の全水道事業者を対象に昨年度、小水力発電の導入が可能かどうかなどについて行った。発電の導入可能な候補地は563カ所あり、そのうち274カ所は20キロワット以上の発電ができることが分かった。水道施設の流量や落差、管路口径などを基に試算したところ、導入可能候補地で生み出される発電出力の総量は1万8742ワットで、年間発電量は1億5848万キロワット時になる。
 環境省によると、約3万世帯分の電力が賄え、年間のCO2の削減量は9万2389トン。昨年度の水力発電調達価格で売電した場合は53億5100万円になる。自家消費した場合には22億6500万円の節約になるという。
 水力発電はこれまで大規模ダムなどによる電力会社の大型発電が中心で、河川や農業用水などを利用した1000キロワット以下の小水力発電は、それほど注目されていなかった。水利権などで河川法の手続きや関係者との調整が煩雑なことや、発電規模が小さくコスト的に見合わないことなどが主な要因だった。
 しかし、固定価格買い取り制度(FIT)が導入され水力発電や太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーへの関心が高まった。環境問題などから新たな大規模ダム開発が難しいため、季節変動や天候に左右されず、24時間発電が可能で、比較的小さな場所でできるなどの利点がある小水力発電に対して政府として普及に力を入れ始めた。国土交通省は13年に河川法を改正し、既に利用の許可を得た水を利用して発電する場合には登録制にするなど手続きの簡素化を図った。
 環境省は河川や農業用水に比べると季節的な変動が少なく安定的に水を供給できる水道に着目し、配送水の高低差によって生み出されるエネルギーを有効活用することで、CO2削減対策にもなるとして、水道施設への発電装置の導入を進めている。特に2030年の40%削減目標(水道事業を含む業務その他の部門)達成に向けて普及・拡大の取り組みを強化している。
 同省は水道施設への導入のメリットとして、安定的で効率的な発電だけでなく、小石やごみなどの不純物が少なく管理された水を利用するため維持管理が比較的容易であることや、既にある施設内での導水管などを利用するため新たな用地買収や大規模な土木工事の必要がないことなどを挙げている。ただ、発電装置がそれぞれの設置場所に合わせて作るため高価になり、コスト的に見合わないことや、施設の設置スペースが狭いために導入可能な場所が限定されるという課題があった。
 同省は13年から3カ年事業として空調メーカーのダイキンに委託して新たな発電装置の開発を進めた。同社は汎用ポンプの活用や部品の標準化によって低コストの発電機や水流の速さに応じて効率的に発電する水車を開発し、さらには発電機と制御装置を一体化して発電装置のコンパクト化が実現した。「管路用マイクロ水力発電システム」として14年度に富山県南砺市の森清配水池で、15年度には福島県相馬市の大野台浄水場で実証実験を行った。
 南砺市の森清配水池では、最大出力22キロワットの発電機1基を取り付けた。設置面積は従来の2分の1程度で、年間最大発電量は一般家庭の38世帯分に相当する13万5000キロワット時が見込まれた。同市水道局では発電装置の低コスト化により本体工事も含め、10年で償却できるとしている。
 相馬市大野台浄水場内には最大出力22キロワットの発電機2基と75キロワットの発電機1基を設置した。75キロワットの発電システムの最大年間発電量は128世帯分の46万キロワット時の能力があるという。
 これまでの実証実験の結果、同省はほほ想定通りの効果が得られたとして、全国の水道事業者に展開・拡大することを目指して小水力発電導入可能性などについての調査を行った。同省によると、現在、2.7%の水道施設が小水力発電を導入している。
 さいたま市では白幡配水場、北部配水場など5カ所の配水場で小水力発電を行い、合計274万キロワット時、760世帯分の電力を発電している。同市によると、04年から運転を始めた白幡配水場では、埼玉県営大久保浄水場からの上水をバルブで減圧していたが、バルブから出る騒音の対策として、水車を回して音を鎮めるとともに発電をするようにしたという。現在は41万キロワット時、126世帯分の電力を起こしている。同市では5カ所のうち3カ所での発電は自家消費にあて、2カ所は売電している。
 また、同県川口市は横曽根浄水場に出力27キロワットの小水力発電を設置し、昨年5月から運転を開始している。さいたま市と同様に大久保浄水場からの水を利用して、35世帯分の年間12万5000キロワット時を発電する計画で、自家使用により、同浄水場で排出するCO2約65トンが削減できる。
 奈良県葛城市では山口地区のため池から落差約100メートル下の新庄浄水場に入る直前の導水管に発電装置を設置、今年3月から稼動が始まった。3キロワットの発電機4台をつなぎ、12キロワットの出力で電気は自家消費する。年間170万円の節約になるといい、工事費を含め3400万円のうち2分の1を国からの補助金で賄うため、設置費は10年で採算が取れると試算している。このほか、松江市や大阪府交野市、新潟県胎内市も国の助成制度を使って小水力発電装置を設置した。
 一方、東京都は村山下貯水池から東村山浄水場までの13.5メートルの落差を利用して出力1400キロワットの水力発電装置を設置し、年間284万1000キロワット時を発電しているほか、南千住、亀戸、八雲、葛西給水所などでも小水力発電を行っている。

http://mainichi.jp/articles/20161102/org/00m/010/065000c

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