2015/11/04
2015年11月04日 09時00分 更新
歴史と自然に彩られた奈良県の農村で、再生可能エネルギーを利用した村おこしの取り組みが進んでいる。100年以上も前に造られた小水力発電所を住民が中 心になって復活させる計画だ。古墳の近くに広がる池の水面や、地域を流れる農業用水路の上には太陽光パネルが並んでいる。
[石田雅也,スマートジャパン]
奈良県の中部に、桜の名所で知られる吉野地方がある。日本の歴史上で重要な局面にたびたび登場する場所で、古墳も数多く点在する。自然に恵まれた 環境を生かして、「吉野共生プロジェクト」が住民を主体に動き出した。高齢化と過疎化が進む地域にあって、自然や歴史を守りながら産業の振興とエネルギー の自立を目指す取り組みだ。
エネルギーの分野では、東吉野村で進めている「つくばね発電所」の復活プロジェクトが中核になる。つくばね発電所は101年前の1914年に運転を開始した水力発電所で、村を流れる川から水を取り込んで地域に電力を供給してきた(図1)。
当時の発電能力は45kW(キロワット)だった。現在から見ると小さな電力だが、村には電灯がともり、周辺の森林から製材業を発展させる原動力にもなった。49年間にわたって稼働し続けた後に、1963年に廃止されている。
それから50年が経過した2013年に、過疎に悩む地域を再生させるシンボルとして、東吉野村の住民が中心になって発電所の復活プロジェクトを発 足させた。古い建屋の隣に新しい発電所を建設して、以前の約2倍にあたる82kWの発電機を設置する計画だ。かつての導水路を利用しながら、新しい水管を 通して発電所に水を送り込む(図2)。
2016年の春に稼働して、年間に64万kWh(キロワット時)の電力を供給できる見込みだ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算する と180世帯分で、東吉野村の総世帯数(980世帯)の2割弱に相当する。建設資金の一部は市民ファンドで集めて、発電した電力の売電収入は村の活性化や 環境教育に役立てることになっている。
以下略
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1511/04/news033.html
2015/11/02
斎藤健一郎 2015年11月2日14時50分
愛知県新城市は、知られざる「エネルギー自給自足先進地」だ。かつて電気網が行き届かなかった山間地で、100年も前から地域の人たちが小水力発電所を造り、自分たちで電気を賄っていた。そして今、山中に埋もれたその遺産をよみがえらせる動きが起き始めている。
市中心部から車で北へ約10分。徳定(とくさだ)川流域にある集落が途切れて眼前に迫った山を、市地域エネルギー推進課の浅井理孝(まさたか)さん (31)がはい上る。その先の斜面に石組みが見えた。「大正時代に造られた小水力発電所の跡です」。落ち葉で埋まっているが、集落に向けて導水路が伸び る。たどると2メートル四方、深さ2・5メートルの貯水槽があった。その向こうは急斜面だ。「ここから一気に水を落とし、下のタービンで発電していまし た。1946年まで徳定の集落約60戸の電気を賄っていました」
戦時中に大手電力会社が送電網を全国に張り巡らせる前、採算が合わないからと多くの山間部は電力供給から取り残された。全国各地に、川の流れを利用して水力発電所を設置する動きがあった。しかし、どこでも発電所を造れたわけではない。
新城には旧作手(つくで)村の巴(ともえ)川流域を中心に、流量豊富で落差の大きい川があった。そして建設費用を捻出できる山の生活があり、住民たちの 意志があった。これまでの調査で、市内に少なくとも32カ所の小水力発電所があったことが判明。取水口や導水路など26カ所が今でも残る。
2015/07/01
過疎に悩む奈良県の東吉野村で小水力発電所を建設するプロジェクトが進んでいる。101年前に運転を開始した水力発電所が廃止されて50年以上を経過し たが、村の活性化を目指して発電所の復活に取り組む。古くなった水路を再利用してコストを抑える一方、市民ファンドで建設資金を集める。 [石田雅也,スマートジャパン]
奈良県の東部にある東吉野村は面積の95%以上を森林が占める。スギやヒノキを中心に林業が盛んで、降水量も多い地域だ。村を流れる川の水を利用 して、101年前の大正3年(1914年)に「つくばね発電所」と呼ぶ水力発電所が運転を開始した(図1)。発電能力は45kW(キロワット)と小さいな がらも、山深い村に電灯をもたらし、林業を発展させた。
それから50年以上も発電を続けた後、東京オリンピックの前年にあたる昭和38年(1963年)に廃止になった。一方で当時は7000人を超えていた東吉野村の人口も現在は2000人程度にまで減少してしまった。
過疎に悩む村を活性化するために、住民が中心になって水力発電所を再生するプロジェクトが2013年に発足する。そして2015年6月28日に発 電所の建設工事に着手した。建設場所は旧・つくばね発電所の建屋の隣で、石で造られた以前の水路を生かしながら新しい水管を通す計画だ(図2)。
発電所の建設予定地から川の上流に約1キロメートルの地点から水を取り込んで、有効落差105メートルの水流を利用して発電する(図3)。水量は最大で0.1立方メートルと少ないため、小容量の水流でも効率よく発電できるクロスフロー式の水車を採用することにした。
発電能力は以前を大きく上回る82kWになる。年間の発電量は65万kWh(キロワット時)を見込んでいて、一般家庭の使用量(年間 3600kWh)に換算すると180世帯分に相当する。東吉野村の総世帯数(930世帯)の2割をカバーすることができる。運転開始は2016年3月を予 定している。
地元の住民が設立した「東吉野水力発電」が発電所を建設・運営する。発電した電力は全量を固定価格買取制度で売電する方針だ。発電能力が200kW未満の小水力発電の買取価格は1kWhあたり34円(税抜き)で、年間の売電収入は約2200万円を想定する。
東吉野水力発電には生活協同組合の「ならコープ」が出資するほか、発電事業に必要な資金の一部を市民ファンドで集めて地域ぐるみのプロジェクトに 発展させる考えだ。総額5250万円の市民ファンドを7月30日まで募集する。発電事業で得た利益は地域の活性化につなげるための基金として運用すること になっている。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1507/01/news036.html
2015/06/29
毎日新聞 2015年06月29日 地方版
東吉野村の小水力発電施設「つくばね発電所」の起工式が28日、同村小の建設予定地であり、村民ら約50人が出席した。再生可能エネルギーの重要性が高まるなか、52年前に廃止された水力発電所を復活させようと村民有志が計画した。完成は来年3月の予定。
旧発電所は、1914(大正3)年、地元有力者らが会社を設立して建設。日裏川の水を引き、水路の落差をつくって45キロワットを発電した。大規模発電所の建設で1963(昭和38)年に廃止となり、建物は撤去され、残った水路も壊れていた。
「小水力発電の復活で地域活性化を」と昨年11月、村の有志らが東吉野水力発電会社(森田康照社長)を発足。新発電所は旧発電所跡の隣で、旧水路の再利用などで引水し82キロワットを発電する。売電の利益で村活性化の基金をつくるという。【栗栖健】
http://mainichi.jp/area/nara/news/20150629ddlk29040314000c.html
2015/06/29
2015年6月29日 奈良新聞
東吉野村小(おむら)で28日、大正3年から昭和38年まで動いていた小水力発電を復活させる「つくばね発電所」の現地見学会と起工式が行われた。最大出力82キロワットで来年3月の運転開始を目指す。
豊かな水資源を生かした村おこしを目的に、住民有志が2年前から計画。市民生活協同組合ならコープ(奈良市)の支援も得て「東吉野水力発電株式会社」を設立し、推進してきた…