2015/11/24
着工まで6年準備
「長年かけて、やっと完成が見えてきたのに…。国はどうしてくれるのか」
由布市庄内町の農業用水路を使った小水力発電所(出力330キロワット)の建設予定地。元治水(げんじすい)井路土地改良区の理事長、佐藤高信さん(75)は、工事が中断した現場で強く憤った。
水利権協議など6年の準備を経て、2017年完成に向け着工したのが昨年。ところが今年6月、九州電力から接続する送電網の容量不足で、増強工事に1億円を超す負担金が必要と示された。さらに大きく膨らむ可能性があり工事には5~7年かかるとも。計画の総事業費は6億円(うち補助金が5億円)。あまりに巨額の追加負担と長い時間に佐藤さんは頭を抱えた。
この発電は農村の未来を懸けた大勝負だ。稲作はもうからず農家の高齢化と減少に拍車が掛かる中、老朽化が進む水路の維持負担は増す一方。年間約4千万円と試算した売電収入を維持費に充て、ムラの活性化にも役立てたいと思い描く。
時間帯限定の接続
12年に固定価格買い取り制度ができ売電価格が上がった時、その期待は膨らんだ。だが太陽光発電の急増で送電網は限界に。元治水の小水力は制度開始前から計画していたのに進めなくなった。送電網の問題は当初から指摘されていた。「なぜ国は並行して対策を取らなかったのか」
新たに九電からは送電網の増強費負担が発生しないが、太陽光発電が本格稼働しない時間帯限定の接続を提案された。高齢化との競争もある。「売電収入が減っても、それしか道はないか」。佐藤さんは歯がみしながら思案している。
県内では他にも元治水のような計画を進めたり、検討している地域が幾つかある。県土地改良事業団体連合会の小川裕三常務理事は「現状にどこも不安を抱いている」。10月には佐藤さんらと九州農政局を訪ね、「農村の活力向上が目的の事業に配慮をしてほしい」と訴えた。
地域活性化にも生かせる再生可能エネルギー。そこに着目して地方創生に挑む人たちが、地方創生を叫ぶ国に振り回されている。
<メモ>
九州電力によると、県内で送電網に余力がないのは日田・九重、湯布院・別府・三重、日出・杵築の3エリア。再生エネ設備(50キロワット以上)の接続をする場合、国のルールで増強費を事業者が負担する必要がある。
※この記事は、11月24日大分合同新聞朝刊1ページに掲載されています。
2015/10/18
大分県内の一部地域で九州電力の送電網の受け入れ能力が限界に達し、再生可能エネルギー発電施設(出力50キロワット以上)の新規接続が困難になっている。接続には送電網の増強工事が必要で、国のルールで巨額の費用負担を求められる事業者は「資金力のない中小では無理」と嘆く。対象地域には地熱や小水力など資源が豊か。開発が活発化してきた温泉熱発電をはじめ、再生エネ先進県の導入拡大に影を落としている。
九電大分支社によると、送電網に余力がないのは日田・九重、湯布院・別府・三重、日出・杵築の3エリア。周辺の電力需要が少なく容量の小さい送電網に太陽光発電の接続が急増したことが要因。接続が増えるほど、より費用の掛かる増強工事が必要になっている。
元治水井路土地改良区(由布市)は売電収入を農村再生に充てようと小水力発電(350キロワット)の整備に着工したが、1億円以上の増強工事費を求められている。さらに膨らむ可能性もあり、佐藤高信理事長は「水利権の協議など6年以上も前から進めてきた。ようやく形になってきた段階で莫大(ばくだい)な費用を出せと言われても…」と頭を抱えている。
各エリアとも巨額の増強工事費を示され、事業継続か断念するかに悩む事業者は少なくない。既に多額の投資をし、後に引けない事業者もいるという。
こうした現状を踏まえて、九電は太陽光発電が本格稼働せず送電網に余力がある時間帯(原則午前9時~午後3時以外)に限った接続の受け付けを始めた。
増強工事費は不要だが、温泉熱発電を計画している別府市の事業者は「売電時間が短く採算が合わない。設備も調整に手間がかかり簡単には止められない」。新制度が困っている事業者の役に立つかは不透明だ。
一方、50キロワット未満の施設は接続に大きな制約はない。とはいえ、別府市の別の事業者は「小規模の温泉熱発電だけでは事業が成り立たない」と指摘。「地域資源を生かせる新たな産業と挑んだのに、これでは成長の芽が育たない。国は『3・11』を教訓に再生エネ普及を目指したはず。こんな中途半端でいいのか」と憤っている。
普及見通しづらく
阿部博光別府大学教授(環境エネルギー政策)の話 送電網の問題は、固定価格買い取り制度の開始当時から指摘されており、国は並行して対策を講じておくべきだった。開発に時間がかかる地熱・温泉熱発電や小水力発電はようやく実績が出始めたのに、割を食った格好だ。早急な対策が必要だが、来春に電力自由化を控えることもあり動きは見えない。再生エネ普及は見通しづらくなっている。
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2015/10/18/001804186
2015/08/08
売電収入を地域活性化に役立てる小水力発電施設が完成しきょう、竹田市で竣工式が行われました。高齢化や過疎化が進む竹田市志土知地区に県内企業が開発した小水力発電施設が完成しきょうは、現地で竣工式が行われました。竹田市土地改良区宮ヶ瀬工区の農業用水路は水量が少なくても落差が30メートルあり17キロワットの発電が可能になりました。固定価格買い取り制度を利用して、九州電力に売電した収入を地元で古代から栽培している紫草を染色する工房の活動費用に充てる計画です。
http://www.e-obs.com/news/detail.php?id=08080031047&day=20150808
2015/07/11
産学官でつくる大分県エネルギー産 業企業会は、再生可能エネルギーなどのビジネス育成を加速させるため、新しい活動方針を打ち出した。資源豊かな大分の地域特性を生かせて、成長の“芽”が 膨らみ始めた「地熱・温泉熱」「小水力」に支援の力点を置く。来年4月に始まる「電力自由化」、燃料電池などで注目が高まる「水素」の2分野にチャレンジ する企業も新たに後押ししていく。
2012年の設立から3年が経過。再生エネごとに明確化してきた異なる課題に対応するため、研究開発、人材育成・会員交流、販路開拓の3部会制を、分野別のグループ制に改めた。
グループを設けた地熱・温泉熱は湯煙発電の実用化など、小水力は地場企業連合体の組織化といった成長の基盤ができつつある。
本年度、地熱・温泉熱グループには約10社が参加。配管をふさぐスケール(温泉成分)対策、熱利用などを候補に、取り組むテーマを検討している。小水力 も 約10社が手を挙げ、技術開発や全国の販路開拓などに挑む見通し。着実に成果を挙げ全国をリードできるよう、資金助成などきめ細かなサポートをしていく。
電力自由化と水素は新たな有望分野として多様な商機が見込まれる。水素は大分コンビナート(大分市)にある工場の製造過程で大量に発生しており、その有効活用も目指す。
参入企業の裾野拡大に向けては、太陽光や風力などを生かすアイデアの可能性調査や試作を支援し、新規の挑戦をしやすくする。
事務局の県工業振興課は「(太陽光発電の新規開発に制約ができ)冷や水を浴びせられた面はあるが、エネルギーは世界的な成長分野に変わりない。再生エネ 先進県の優位性を生かし、引き続き地場企業を応援し基幹産業化を目指す」としている。 ※この記事は、7月11日大分合同新聞朝刊1ページに掲載されています。
https://www.oita-press.co.jp/1010000000/2015/07/11/003023549