2016/06/21
2016年6月21日掲載
福岡工業大学(福岡市)は農業用水路などで落差がなく、流れが緩やかな水路にも設置できる小水力発電装置「フラッター水力発電装置」を開発した。災害時の非常用電源や電動農機具の夜間充電など農村部での活用が期待できる。2本の翼が水中で左右に往復運動しながら発電する仕組み。水路の形を変える大規模工事は必要なく、既存の水路で簡単に設置できるため、初期費用が抑えられるメリットがある。
地方では、農業用水路を使った小水力発電の設置ニーズは高い。だが、高速でプロペラを回す速い水流が欠かせず、水車の設置には滝のような落差が必要になる。土木工事や高額な発電機本体の費用負担が、普及の課題となっているという。
今回開発した「フラッター水力発電装置」は、水中に沈めた翼が流れに対して左右に往復運動する仕組みで、落差がない水路でも毎秒1メートルの低流速から発電できる。福岡市の(株)技術開発コンサルタントと産学連携で取り組む。
同大学工学部知能機械工学科の阿比留久徳教授によると、落差1メートルの水路で1キロワット発電できる一般の水車でも、毎秒1メートルの流速では発電は10ワットしかできない。一方、同装置では30ワットの発電が可能。もし毎秒4メートルの流速があれば2キロワット発電できるという。装置にはプロペラのような高速回転部がないため、ごみの付着やカエルや魚など水中生物を巻き込まずに済む利点もある。
2016年1月から、熊本県南阿蘇村で実用化に向けた効果を検証中だ。幅1.5メートル、水深約50センチの農業水路に設置し、20〜50ワットを発電、発光ダイオード(LED)の外灯3本に送電している。4月の熊本地震でも装置は壊れず、今も小学生の通学路を照らしている。
設置水路を貸す南阿蘇村の久木野村土地改良区は「管内の農業水路を有効活用できればいい」と関心を高める。村と連携し、発電装置が止まらないように水路のごみ撤去に協力する。村企画観光課の今村一行主幹は「携帯電話の充電など災害用の非常電源としても利用できる」と期待する。
今後はバッテリーへの充電と放電の組み合わせを最適に制御して、ためた電力を有効的に利用する研究も進める。複数台を連結させればより多くの電力の確保できるとする。阿比留教授は「夜間の農機具充電やハウスの照明など農業分野での活用を目指し改良を重ね、事業化していく」と強調する。
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