2017/03/28
2017年3月28日掲載
うきは市(福岡県)が県営藤波ダムの直下で2015年度から建設を進めていた小水力発電所「うきは藤波発電所」が完成し、4月1日に運転を開始する。福岡県の県営ダムで市町村が取組む小水力発電所の完成は「糸島市瑞梅寺ダム小水力発電所」に続き2カ所目となる。
福岡県では、環境に負荷の少ない安定的なエネルギーの供給を目指し、市町村と連携して地域の資源や特性を生かした再生可能エネルギーの導入を積極的に推進している。
その一環として、2013年、県営ダムの放流水を活用した小水力発電について事業の採算性の検討を実施。12ダムのうち4ダム(瑞梅寺、藤波、力丸、陣屋)について採算が見込まれると発表した。また、再生可能エネルギーの地産地消モデルの構築につながる取組みを支援するため、事業費支援(1億円を上限として補助)を実施すると発表した。
その後、糸島市が発電事業者として事業の実施を決定し着工。2016年11月、糸島市瑞梅寺ダム小水力発電所が完成した。市町村による県営ダムの放流水を活用した小水力発電の取組みは、福岡県はもとより九州初の事例となった。
今春完成したうきは藤波発電所は、治水用の藤波ダムの放流水を取り込んで小水力発電に利用する。ダム水面の高さと水車までの落差は約40m。工事では、藤波ダムの取水設備から水圧管路を引き、発電所の内部にある水車発電機まで放流水を取り込んだ。水車発電機は横軸フランシス水車を採用した。
発電能力は162kW、年間発電量は一般家庭約270世帯分の消費量に相当する979MWhを見込んでいる。建設工事にかかった総事業費は3億4,400万円。そのうち1億円は福岡県エネルギー利用モデル構築促進事業費補助金で賄った。市は年間3,300万円の売電収入を見込んでいる。
2017/03/01
2017年3月1日掲載
福岡県の山間部にある治水用のダムに新しい小水力発電所が完成した。4月1日に運転を開始する予定で、年間に270世帯分の電力を供給できる。売電収入は年間3300万円を見込む。ダムが立地する県南部の、うきは市が建設・運営する。3億円を超える総事業費のうち1億円を福岡県が補助した。
[石田雅也,スマートジャパン]
福岡県が管理する15カ所のダムの中でも、うきは市にある「藤波ダム」は最も新しくて2010年に運用を開始した。県の南部を通って有明海へ注ぐ「筑後川」の上流にある。川の流域の洪水を防ぐ目的で造った治水用のダムだ。
通常時も下流の自然環境を保護するために放流を続けている。その放流水を取り込んで小水力発電に利用する。
うきは市は2015年度から小水力発電所の建設に着手、2017年2月に工事を完了した。藤波ダムの取水設備から延びる既設の放流管に水圧管路を追加して、発電所の内部にある水車発電機まで放流水を取り込む仕組みだ。この間の水流の落差は40メートルに達する。
最大で毎秒0.55立方メートルの放流水を使って、発電能力は162kW(キロワット)になる(図3)。現在は発電設備を調整中で、4月1日に運転を開始する予定だ。年間の発電量は98万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して270世帯分に相当する。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は69%になり、小水力発電の標準値60%を上回る。
発電した電力は全量を固定価格買取制度で売電する方針だ。1kWhあたりの買取価格は34円(税抜き)で、年間に3300万円の売電収入を見込める。20年間の買取期間の累計では6億6000万円になる。一方で建設工事にかかった総事業費は3億4400万円である。そのうち1億円を福岡県の補助金でまかなった。稼働後の運転維持費を加えても十分に採算がとれる。
20年間に約1億円の利益を見込める
福岡県は再生可能エネルギーの導入量を拡大する施策の1つとして、県営ダムの放流水を利用した小水力発電の可能性を2013年度に検討した。すでに水力発電を実施中のダムを除く12カ所を対象に、想定できる発電量と建設工事費・運転維持費をもとに収益性を評価して候補を絞り込んだ。
その結果、藤波ダムは買取期間の20年間に9300万円の利益を上げることが可能で、15年で投資を回収できるめどが立った。この時点では発電能力を153kW、年間の発電量を86万kWhと見込んでいて、実際よりも少し低い水準で収益性を評価していた。発電能力と発電量を増やすことができたため、投資回収年数は短縮する見通しだ。
12カ所の中で収益性の評価が最も高かった「瑞梅寺(ずいばいじ)ダム」では、2016年11月に小水力発電所が運転を開始している。発電能力と発電量は当初の想定どおりで、20年間に1億4800万円の利益を上げられる見込みだ。ダムが立地する糸島市が2億1200万円の総事業費で建設した。うきは市と同様に福岡県から1億円の補助金を受けている。
県営ダムの放流水を利用する2カ所の小水力発電所は、ほぼ同じ構造で造られている。ダムの放流管から水車発電機へ水流を取り込む仕組みだ。この方式だと落差が大きくて水量も安定しているため、水車発電機には最も汎用的な横軸フランシス水車を採用した。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1703/01/news055_2.html