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2016/06/11

自立の精神を取り戻す 石徹白の小水力発電【WEDGE Infinity】

2016年6月11日掲載
磯山友幸 (経済ジャーナリスト)

仕事を作り、身の回りの必要なものを用意するという自立の精神。そんな思いを持った人たちが「エネルギーの地産地消」に取り組み、仕事の少ない田舎でも自活する術を見出している。

 集落のほぼ全戸、約100世帯が出資する水力発電所が今年6月1日に稼働する。岐阜県中央部の郡上八幡からさらに車で1時間ほど。福井県側に峠を越えた山奥にある石徹白(いとしろ)という集落での話だ。
 石徹白は、霊峰白山への登山口に当たり、景行天皇12年(西暦82年)に創建されたと伝わる白山中居神社が鎮座する。上古から続く長い歴史を持つ集落だが、いま消滅の危機に直面している。1960年ごろに1000人を超えていた人口は減少を続け、現在270人あまり。何とかこれに歯止めをかけようと始めたのが、豊富な農業用水を活用した小水力発電だった。
 発電した電力はすべて北陸電力に売電。集落で使う電力を上回る総発電量になる。計算上の自給率は100%を超え、売電収入が入ってくることになる。その収入を集落の活性化に役立てようというわけだ。
 集落の高台を流れる1号用水の水を谷間の朝日添(わさびそ)川に導水管で落とし、途中に設置した発電機の水車を回す。落差110メートルを利用し、最大116キロワット時の発電を行う計画だ。

 もちろん小規模とはいえ、発電所の設置には資金がかかる。工事費は2億4000万円。発電が始まれば、売電収入で維持管理費などは捻出できるとしても、そのためには事業主体が要る。そこで、住民が参加する農業協同組合「石徹白農業用水農業協同組合」を新たに設立したのだ。2014年のことだ。
 2億4000万円のうち岐阜県と郡上市からの補助金で75%を確保。残りの6000万円を農協への出資と借入金で賄うことにした。地区の自治会長だった上村源悟さん(65)が新設した農協の組合長に就任。地区の代表たちと手分けして住民への説得を行った。
 「地域にどんどん元気がなくなっていく。集落の全員が力を合わせて何かに取り組むことが必要だ」
 住民の説得に当たった上村さんの危機感は強かった。11年に退職するまで、郵便局長として集落の衰退を見つめ続けてきたからだ。かつては各家庭で行っていた「おとりこし」という秋の収穫後の集まりが少子高齢化と共に衰退。お寺に集まる形で細々と続いていたが、それも2年前に中断した。
 説得に自治会が乗り出したことで、集落はひとつになり、発電所のための農協新設に漕ぎ着けた。
 実は、今回稼働する小水力発電には前段がある。石徹白が地域おこしの手段として「小水力発電」に乗り出したのは07年のこと。NPOで再生可能エネルギーなどに取り組んでいた平野彰秀さん(40)が、岐阜県内の小水力の適地を探し歩く過程で、石徹白にやってきたのだ。平野さんは大学に入学した18歳から32歳まで東京で生活、外資系経営コンサルティング会社などに勤めたが、08年に32歳で岐阜市にUターンしていた。もともと地域づくりの活動をしたいという狙いがあった。
 石徹白を訪れた平野さんと出会ったのが、石徹白で電子機器を扱う会社を営む久保田政則さん(68)。今は地域おこしを担うNPO法人「やすらぎの里いとしろ」の理事長も務める。「豊富な農業用水を目に見える形で活用すれば、地域おこしの起爆剤のひとつのツールになるのではないか」と考えた。

 久保田さんは様々な形の小水力発電の実証実験を平野さんたちと共に始める。タテ軸型、らせん型、上掛け水車型。手作りできるものは手作りし、コストを下げた。始めは失敗を繰り返したが、徐々にコツをつかんだ。
 改良した「らせん型水車2号機」はパイプの中のらせん状のプロペラが水流で回ることで発電する。設置から7年たった今も動き続け、最大800ワットの電気を起こしている。これは売電せず、NPOの事務所などで使っている。
 集落の中心近くに設置したのは上掛け水車型。水車が勢いよく回ることで発電する。この電気は隣接の農産物加工場に供給。使われていなかった減圧乾燥機を復活させ、とうもろこし粉や乾燥フルーツなどを製造する。寒暖差の大きい石徹白のとうもろこしは糖度が高く名産品。形が悪く出荷できないものをパウダー状に加工し、パンやケーキ用として販売している。
 初めは奇異な目で見ていた住民たちの意識が変わったのは、こうした取り組みに全国からの視察が相次いだのがきっかけだった。今でも年間500人以上が水車を見にやってくる。09年には石徹白にやってくる人たち向けにカフェをオープン。4月から10月の土日に営業を始めた。何せ300人に満たない集落なので、飲食店も土産物店もなかったのだ。
 住民の変化を目にして平野氏も本気になる。いつまでも「よそ者」としてかかわっていたのでは、本物の地域おこしはできない。11年に石徹白への移住を決めたのだ。移住を前に奥さんの馨生里さんは洋裁学校に通い、集落で「石徹白洋品店」を始めた。集落の伝統的なものに惹かれ、石徹白に伝わる野良着「たつけ」を復活させた。そうした地道な取り組みが、小水力発電への住民の理解を深めていったのだ。

 住民出資の水力発電所が稼働すれば、売電の利益だけで2000万円前後になる。減価償却分の積立金や利払いなどを除いても数百万円が残る。これを地域振興に活かしていくことになる。
 平野さんの移住をきっかけに、都会の若者が石徹白に移って来るケースが増えた。この7年で12世帯にのぼる。実は09年に地域で「石徹白ビジョン」を策定したが、その際に「30年後も石徹白小学校を残す」という目標を掲げた。それを実現するためには移住者は必須なのだ。「石徹白人」という集落の公式ホームページを立ち上げ、「子育て移住してみませんか?」と呼びかけている。
 そんな取り組みの結果、移り住んだひとりが廣中健太さん(34)。東日本大震災を機に、震災直前に生まれた子どもと奥さんを連れて神奈川から移住した。平野さんの講演を聞いたのがきっかけで石徹白を初めて訪れたが、白山中居神社を詣でた際に魂を揺さぶられる思いがしたのだという。移住に当たっての問題は「仕事がない」こと。今は、移住前に取得したヘルパーの資格を活かし、介護施設で働く。そのかたわら、農作業や釣り、狩猟など自然を満喫した〝仕事〟をする。
 「昔は仕事を作っていたんです。自分で身の回りの必要なものを用意した。自立の精神です」と平野さんは言う。もともと石徹白には「自立の精神」が宿っているという。江戸時代の石徹白の村人は全員、白山中居神社の社人、社家という扱いで、名字帯刀を許され、年貢は免除されていた。住民たちで物事を決める伝統が根付いているのだ。大正13年には村人が皆で出資して発電所を作った歴史もある。石徹白が小水力発電で自立しようとしているのは、実は90年前の再現だったのである。
 都会から遠く離れて隔絶された土地で、自然に囲まれて自活する。自立心旺盛な若者たちを引き寄せる空気が石徹白には満ちている。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/6318?page=1

2016/06/02

石徹白発電所が完成 住民出資「農村の夢」稼働【岐阜新聞】

2016年6月2日
 岐阜県郡上市白鳥町石徹白(いとしろ)に、農業用水を活用した小水力発電所「石徹白番場清流発電所」が完成した。同地区約100戸のほぼ全戸が出資した「石徹白農業用水農業協同組合」が主体となり2年前から整備してきた発電所で、全国的にも珍しい事例という。1日に通電式があり、稼働した。
 最大出力125キロワット、年間発電量は約61万キロワット時で、一般家庭130世帯分の年間使用電力量に相当する。総事業費は約2億3千万円で県、市の補助も受けた。
 明治時代に住民が手で堀った農業用水を活用。電気は全量を売電し、年間約2千万円の収益は、耕作放棄地を活用した農業を進めるなど、地域振興に活用する予定。
 通電式には約50人が出席。上村源悟同組合組合長や高木敏彦県農政部長、地元の野島征夫県議らがスイッチを押した。上村組合長は「ここからが本当の仕事になる。この地域を後世につないでいくため、頑張っていきたい」と話した。式典後、組合の平野彰秀参事が施設の概要説明を行った。
 同地区では、県が昨年整備した「石徹白1号用水発電所」も稼働しており、2発電所の年間発電量は、集落の年間電気使用量の2倍以上に相当するという。

http://www.gifu-np.co.jp/news/kennai/20160602/201606020914_27393.shtml

2016/05/27

岐阜県の農業組合、農業用水で125kWの小水力発電スタート【環境ビジネスオンライン】

2016年5月27日掲載
 岐阜県は、農業水利施設を活用した小水力発電所「石徹白番場清流(いとしろばんばせいりゅう)発電所」(郡上市白鳥町石徹白)が、6月1日より運転開始すると発表した。石徹白農業用水農業協同組合が主催する通電式が、同日の10時30分より開催される予定だ。
 この小水力発電所は、県の「朝日添地区(わさびそちく)小水力活用支援事業」を活用し設立されたもの。事業主体は同農業協同組合。設計から工事施工まで地元が主体となっておこなった。県単補助事業による売電を行う小水力発電所としては、県内で初めてとなる。
 総事業費は2億3千万円。この費用の内訳は、県が55%、同市が20%、地元の組合や住民などが25%を負担した。朝日添川から取水し、有効落差104.5メートルを利用し、毎秒140リットルの水で125kWの電力をつくる。年間発電量は、61万kWh(一般家庭130世帯分の年間使用電力量に相当)を見込む。CO2削減効果は年間約340トン。
 同地域では、以前から地域活性化を目的とし、小規模な小水力発電によるエネルギーの地産地消の取り組みを行ってきた。今回の事業は、地元の過疎化・高齢化が進んでも集落として存続できる地域づくりをめざし、地元のほぼすべての世帯が参加し実施された。

https://www.kankyo-business.jp/news/012699.php

2016/05/19

ダムの放流水を発電に活用、年間370世帯分の電力に【スマートジャパン】

2016年5月19日掲載
中部電力グループのシーテック(名古屋市瑞穂区)が、2015年10月から建設工事を進めていた「秋神水力発電所」(岐阜県高山市)が完成し、このほどに営業運転を開始した。約50メートルの落差を利用して、370世帯分の電力を発電する見込みだ。
[長町基,スマートジャパン]

 このほど発電を開始した「秋神水力発電所」(岐阜県高山市)は、中部電力が所有する秋神ダムの右岸直下に新設したもので、ダムから放流する維持流量を有効活用して発電する。同社グループ会社のシーテックが建設した。

 発電出力は290kW(キロワット)、有効落差は50.33メートルで、最大使用水量は毎秒0.73立方メートル。年間発電量は一般家庭約370世帯分の年間使用電力量に相当する約133万kWh(キロワット時)を想定している。CO2削減量は年間660トンに相当するという。

 同発電所はシーテックが自社開発する初の水力発電所であり、水車には独オズバーガー社製のクロスフロー水車を採用している。クロスフロー水車は水の圧力と速度をランナと呼ばれる羽根車に作用させる構造の水車。クロスフローとは水がランナを交差して流れることを意味しており、主に1000kW以下の小水力発電所で採用される。

 クロスフロー水車は水中の土砂や流木などに対して耐久性があり、流量変化に追随して調整できるため、流れ込み式水力発電所に適している。さらに、低負荷から最大負荷まで安定した運転が可能で、過酷な条件下でも信頼性が高いという。

 また、同社製クロスフロー水車は溶接加工されており、標準化された部品の組み合わせによる構成のため、様々な設計要件に対応できるとともに、低コストで短納期の生産を可能にしている。

 水力発電は再生可能エネルギーの中でも安定した発電電力量を期待できることから、今後も中部電力グループ一体となって、一般水力や維持流量発電の開発に取り組む方針だ。

http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1605/19/news027.html

2016/05/06

DTS飛騨水力発電が協定【建通新聞】

2016年5月6日

 飛騨市とDTS飛騨水力発電(六反田則幸社長)は、小水力発電の開発に伴う協定を締結した=写真。
 協定内容は、▽発電所建設と操業の円滑な推進▽発電所建設に必要な資材の地元調達▽市民の優先雇用▽自然環境の保全―など。

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http://www.kentsu.co.jp/webnews/html_top/160506300028.html

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