2016/06/18
2016年6月18日掲載
「われわれの既存電力は再生可能エネルギーのバックアップのためにある」。ドイツの大手電力会社幹部は言い放つ。欧州、中国、中東さえ、世界は変わり始めている。ためらう日本を置き去りに。
昨年ドイツでは、総発電量に占める再生可能エネルギー(水力を含む)の割合が30%に到達した。
二位の褐炭火力は24%。風力、特に洋上風力の増設が目立つ。
日本では12・6%(二〇一四年度)。うち8・2%が水力だ。
ドイツは3・11を教訓に、二二年までの原発廃止をめざし、再生エネの割合を80%以上にするとの目標を掲げている。
ことし元日、ドイツ(欧州)最大手の電力会社「エーオン」が、売り上げの大半を占める石炭火力部門などを「ユニパー」という新会社をつくって切り離し、再生エネ中心の会社に生まれ変わった。
エネルギーの未来を見据えたこの大胆な改革は“エーオン・ショック”と呼ばれている。
ドイツは特別な国なのか。
自然エネルギー財団(東京)によると、今年第一・四半期の米国の再生エネ導入量は、化石燃料の七十倍以上も増加した。
中国の研究機関は昨年、二〇五〇年までに電力の85%を再生エネで賄うビジョンを公表した。
産油国のドバイでさえ、太陽光による電気の売値が、わずか一年半で半分に値下がりした。それだけ増えたということだ。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、今後十年で太陽光の発電コストは59%、洋上風力は35%、削減可能と予想する。
一方、原発の建設コストは3・11以降、安全対策の必要性から高騰を余儀なくされている。膨大な廃炉コストも経営の重荷になる。
英南西部で二五年の稼働をめざすヒンクリー・ポイント原発は、当初百二十億ポンド(約二兆円)と見込んだ事業費がすでに一・五倍に膨らんだ。「原発は割に合わない」。もはや世界の常識だ。
膨らむ再生エネ市場には、毎年三十兆円の資金が流れ込んでいる。ドイツの狙いはそこにもある。
3・11や温暖化対策だけではない。
コストと投資。資金の流れがエネルギー社会の基盤を根底から変えつつある。
原発事故に膨大なコストを費やしながら、ウランや化石燃料への依存から逃れられない日本こそ、特別な国とは言えないか。
風向きではなく、時代が大きく変わる。乗り遅れてはならない。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016061802000136.html