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2015/07/06

京は水もの:えにし訪ねぶらり探訪/3 関西電力夷川発電所 大正生まれのミニ水力 /京都【毎日新聞】

 新緑が映える琵琶湖疏水の夷川(えびすがわ)船だまりに臨み赤レンガ造りの建物がたたずむ。春はお花見でにぎわい、ゴールデンウイークにかけては観光客を乗せた「十石舟」が行き交う。京都でも人気の親水空間だが、ひっそりと風景に溶け込んだレトロな建物が、れっきとした発電所だとはなかなか気付かない。
 その関西電力夷川発電所(京都市左京区)は大正3(1914)年生まれ、101歳で現役の水力発電所である。一般公開していないが、特別にお願いし内部に足を踏み入れると、ウィーンという高い音と、ゴロゴロゴロという低いうなり音が重なって響く。直径約3メートルの鉄製チューブの中を水が流れ、プロペラのついたシャフトを回転させ、その動力で発電機を回すシンプルな構造だ。発電所というよりも、どこか町工場の雰囲気が漂ってくる。発電能力は300キロワットと小粒だが、家庭500軒分の電力を今も生み出している。
 2キロほど上流にある蹴上発電所(4500キロワット)はわが国初の事業用発電所として1891年に産声を上げ、その電力を利用して日本初の市電が走るなど、京都の近代化を進める原動力となったことで有名だ。一方、夷川発電所は第2疏水の開削に伴って建設された弟分の「ミニ発電所」で、一般の話題になることは少ない。だが関西広域小水力利用推進協議会(中京区)の里中悦子事務局長は「これからの日本で大きな可能性を秘めている。気になる存在ですね」と注目。「蹴上発電所は33・5メートルの落差を利用して発電していますが、夷川はわずか3・4メートル。ヨーロッパではドナウ川など、平野をゆったり流れる大河の水を引き入れた低落差式の発電所が結構あるんですが、日本では珍しい。そんな発電所が、150万都市の真ん中で、しかも大正時代から続いているのが驚き」と話す。
 大きな落差が必要であれば設置場所は山間部などに限られる。だが低落差の水力発電なら都市部でも“地産地消型”の発電が可能。だからこそ「日本に小水力発電を普及させるヒントになる」と期待するのだ。
 その夷川発電所。運用開始から90年近くたった1993年に水車や発電機を一度交換しただけ。技術が成熟し、長持ちするのも水力発電の利点である。
 運営に当たる関電京都電力システムセンター主任の藤井健二さん(53)は「大きな発電機も、小さな発電機もチェックすべき点は同じ。回転部の温度や湿度の管理など、小さいからといって手間に異なるところはありません」と説明。「水力発電は水力という再生可能な純国産エネルギーを利用しており重要度は高まっている。特に夷川はわずかな落差で発電しており、都市で使うのに適した性質を持っている。疏水べりにある夷川発電所は、私が入社したときから30年以上も見慣れた発電所であり、『そこにあるのが当然』の風景。100年以上使われてきた発電所を、これからも次世代へ大切に引き継いで行きたい」と、うなりをあげる発電機をいとおしそうに眺めた。【榊原雅晴】
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 次回(27日)は嵐山のマイクロ発電所を訪ねます。


http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20150706ddlk26040343000c.html

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