2015/06/19
再生可能エネルギーの地産地消に取り組む栃木県で電気自動車を利用した実証試験が新たに始まった。小水力発電で作った電力を電気自動車に充電して農地まで運んで電力源として利用する試みだ。電動草刈機に電力を供給するほか、特産品や農作物の配送に電気自動車を活用する。
[石田雅也,スマートジャパン]
栃木県では農村で再生可能エネルギーを地産地消する「スマートビレッジ」の取り組みを2011年度から5カ年計画で推進している。最終年にあたる2015年度はエネルギーの消費に重点を置き、宇都宮市内の農業関連施設3カ所で実証試験を開始した(図1)。
3カ所のうち「こもりやグリーン倶楽部」では、田んぼのあぜ道に生える草を刈り取るための電動草刈機に再生可能エネルギーを利用する。同じ市内に ある小水力発電所で作った電力を軽トラック型の電気自動車に充電して田んぼまで運んだ後に、電動草刈機のバッテリーを充電する方式だ(図2)。
稲作期の6月から10月まで、3台の電動草刈機を使って月に1回の頻度で除草を実施する。電力を運ぶ軽トラックには、三菱自動車の「ミニキャブ・ ミーブ トラック」を使う。充電容量は10.5kWh(キロワット時)で、一般家庭が1日に使う電力量(10kWh)とほぼ同じである。
残る2カ所の農業関連施設では特産品や農作物の配送に電気自動車を利用して、エネルギーの地産地消の効果を実証する予定だ。1カ所は養鶏場で、新 鮮な卵で作ったプリンを電気自動車で取引先に配送する。もう1カ所は社会福祉法人が農作物を直売場などに配送するのに電気自動車を利用する。
配送用の電気自動車にはミニキャブ・ミーブ トラックのほかに、日産自動車の商用バン「e-NV200」も使う計画だ。e-NV200の充電容量は24kWhと大きい。2カ所の農業関連施設では6月 15日から電気自動車の利用を開始して、12月14日までの6カ月間にわたって実証試験を続ける。
この実証試験では電気自動車に供給する電力を農業用水路に設置した小水力発電所で作るため、CO2フリーのエネルギーを地産地消することができ る。栃木県は2011年度に開始した「スマートビレッジモデル研究事業」の初年度に「鬼怒中央飛山発電所」の運転を開始している(図3)。
発電能力は最大2.5kW(キロワット)で、発電した電力は併設の蓄電池に充電する。蓄電池に貯めた電力を急速充電器から電気自動車のバッテリーに供給する仕組みである(図4)。小水力発電の電力を電気自動車に充電して農業に利用する試みは全国で初めてだ。
栃木県には河川や農業用水路が数多く流れていて、小水力発電の導入が活発に進んでいる。最近では太陽光発電やバイオマス発電の導入量も増えてきた。こうした再生可能エネルギーを農業で地産地消することによって地域の活性化につなげていく。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1506/17/news036.html