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2013/09/03

自然エネルギーでの発電で環境教育を 〜江東区の取り組み

区内でのマイクロ水力発電の設置調査、単体で自治体が設置したものとして日本一の大きさを誇る若洲風力発電施設など、自然エネルギーとの関わり合いを作ろうと模索している東京・江東区。水害に苦労し、ゴミ問題にも泣かされてきた。自治体としてのこれまでの経験からも「環境」と密接に関わり合ってきた。風力発電やマイクロ水力発電などの自然エネルギーを活用した「環境教育」に熱心に取り組んでいる。
現在、調査、候補地選定中のマイクロ水力発電設備が設置されれば、都心では不可能と言われてきた小水力発電設備が初めて東京23区に設置されることになる。
日本全体で、さまざまなエネルギーの可能性を探し、開発する必要性が生じる今後。1行政区が主導しての自然エネルギーの開発は可能なのか。自治体と、エネルギーとの関わり方は、どう変わるのか。

<水路が縦横に巡る江東区>
人口約47万人と、地方都市なみの人口を抱える江東区。江戸時代には、現在の亀戸付近しか土地がなく、江戸初期から湿地帯の埋め立てが始まった。現在の江東区は、観光地となっているお台場、豊洲など、そのほとんどが埋立地。区内を荒川、隅田川などの河川、運河や水路が、東西南北、縦横に走っているのも江東区の特徴。江戸時代、徳川家康が、現在の江東区を東西に走る小名木川を水路として整備し、行徳(千葉県)の塩田から塩を運ぶのに、この川を利用していた。
現在も、区内を巡る水路、運河、橋とともに区民の生活がある。水彩都市だ。現在でこそ、水辺はきれいに整備されているが、70年代ごろには、その水路の多くはドブ川で、水位も高く、治水・水害にも苦労してきた。

<区内の河川を利用して発電>
江戸時代初期から「水」と深く関わってきた江東区。区の担当者らは、この運河や水をうまく活用できないかと知恵を出し合った。
山があり、水量も豊富な富山県などの地方では、河川、水路を小水力発電に活用した成功事例があったが、都心で、小水力発電を開発する事例はほとんどない。
江東区では、平成25年度の事業として、「マイクロ水力発電設備」の設置について調査を開始。約740万円の予算を計上して、水量、発電可能性などを調査し、区内にある公園の水路などに小水力発電所を設置する場所を選定。区内9カ所を選び出し、事前調査を行なって、その候補地を区内の親水公園近くにある3カ所に絞った。

<東京23区では初>
有力候補となっている横十間川の水門 高低差の少ない都心で小水力発電の開発を試みる例は少ない。この江東区のマイクロ水力発電設備が設置されれば、東京23区では初となり、開発する動きが他の区にも広がる可能性は十分ある。
江東区では、候補地となっている小名木川近辺の水路に1,000万〜2,000万円の予算を取って設置する見込み。ただ、予算からも推察できるように、規模は大きくない。発電そのものを主な目的としているわけではなく、江東区の子どもたちへの「環境教育」を重要視している。
地方では、水路に発電機を付けるマイクロ水力や、山間部や河川に水車を取り付け小水力発電を導入する動きが広がっている。都心では、水量、落差が少なく、設置するのは難しいと言われてきた。「調査で、1メートル程度の落差のところに設置することになる。多くの発電量を見込めるわけではない。街路灯で言えば、LEDの街路灯で30本ほどにしかならない。区民に、水力発電がどのようなものか間近に見てもらうことを目的にしています」と、江東区の環境清掃部温暖化対策課の成田勇臣課長は説明する。

<主目的は環境教育>
最有力候補は、小名木川と横十間川がクロスする親水公園の水路で、十字型の橋の横にある。東京スカイツリーからも近く、ドラマの撮影場所などにも使われているところ。
親水公園にはボート乗り場などがあり、水辺の区民の憩いの場になっている。以前は、ドブ川だったところを整備し、水辺で家族連れなどが憩うことができる場所に変えた。「江東区には、水路が多く、その水位も高い。長く水害と戦ってきた街。治水に苦労してきた土地柄もあって、逆に水を活用できないかという発想が出てきたのだと思う。発電量にはこだわらず、子どもたちが、『なるほど水力発電とはこういうものか』と自然エネルギーを身近に感じてもらうものになれば」と、環境教育に主眼を置いている。
発電規模こそ大きくはないが、水など、その土地にある自然を利用してエネルギーを生み出そうという取り組みは、次の世代につながる貴重な物となりうる。
(つづく)
【岩下 昌弘】

http://www.data-max.co.jp/2013/09/03/post_16455_k_is_2.html

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