2016/04/09
2016年04月09日
再生可能エネルギー(再エネ)によって地域活性化を図ろうと、飯豊町松原地区で、地元住民とNPO、山形大の関係者による小水力発電の実証実験が進められている。地区内の農業用水路を活用して生み出した電気を、ビニールハウスで使用し大葉を栽培。今冬に生産した“試作品”をこのほど、宮城県の食品業者に提供して高評価を受けた。将来的には事業規模を拡大し、地元住民の雇用や産直販売を通じて町のにぎわい創出につなげたい計画だ。
実証実験を手掛けているのは、2007年から水力発電に着目した活動を展開している松原地区保全協議会(山口義雄会長)、山形大東北創生研究所(大場好弘所長)、新庄市のNPO東北地域エネルギー開発機構(小川健理事長)。地域における再エネの利活用、高齢者や冬期間に適した農業の可能性を探り、昨年4月に実験を開始した。
発電場所は、JA山形おきたま飯豊ライスセンター近くにある県営松原用水路。落差11.7メートルの傾斜地に備え付けられている既存の水路と並行し、直径10~20センチの塩ビ管を設置した。ここを通した水の勢いを生かし、発電機の水車を回して電気を起こすシステムを構築した。
発電機は東北地域エネルギー開発機構が用意。1分間に1500回転し、実験では2キロワットの電気をつくりだしている。この電気は、大葉の芽出し用の土に埋めたパネルヒーターに活用。昨年12月に栽培に取り掛かり、現在は1株40センチほどの大きさにまで成長している。
県によると、小水力発電を通じた農業展開は県内では珍しい試み。大葉は摘み取る負担が少なく、高齢者が栽培しやすい利点がある。需要が高まる冬場に生産量を増やしたい考えで、山口会長は「事前の話し合いでは、地区民の約8割が再エネの有効利用を望んでいた。水力発電、大葉の栽培で村おこしを図りたい」と見据える。
今後は発電機の設置箇所の増設など、事業化に向け協議していく。実験に携わる山形大東北創生研究所の村松真准教授は、「小水力発電によって経済の循環が生まれる取り組み。森林整備の重要性に目を向けるきっかけにもなる」と意義を語っている。
http://yamagata-np.jp/news/201604/09/kj_2016040900183.php
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