2015/10/30
発電が国内で脚光を浴びつつある。一般的には千キロワット以下を小水力と呼ぶ。水量と落差があればどこでも発電できることから、水資源が豊富な日本に向いている。
普及の足がかりとなったのは2013年の河川法改正だった。小泉純一郎氏、細川護熙氏の元首相コンビが活動する「自然エネルギー推進会議」で理事を務める中塚一宏元金融担当相が言う。
「河川の流水を利用する水利利用では、河川法に基づいて河川管理者の許可を得るのが基本でした。しかし、実際には申請しても許可を取ることはほぼ不可能だったため、せっかくの小水力発電も普及が進まなかった。そこで民主党政権時代に河川法を改正して、許可制から簡素な登録制にすることを決めたのです。一定の要件を満たせば、すべて登録で済むようになり、小水力発電に参入しやすくなりました」
中塚氏らの支援で今年3月から静岡県長泉町で運転が始まった小水力発電は、幅2メートルの農業用水路に8キロワットの小型水車を置く。年間の売電収入は200万円弱と少ないが、新たに28カ所、増設する計画がある。設置費用は3500万円程度。自治体の補助を受けず、賛同企業を募る。この発電設備も京葉ガスが一定の費用負担をした。
「自然エネルギーは公益性がないと普及しない。そのため、移動式給電装置や携帯型バッテリーを備え、災害停電時には地域の電源として活用してもらう。売電収入は設置費用を負担してくれた企業、水利権者の土地改良区、地元の町内会などと分け合います」(設置者の自然エネルギー利用推進協議会の岡本欣訓氏)
自治体が小水力発電に取り組むケースもある。東京都江戸川区の葛西給水所では、13年から小水力発電を始めた。
地下室の水道配管の先に、幅と高さが2メートルほどの発電機を設置した。水道管の中の上水が、カタツムリのような形をしたタービンに流れ込み、水流で発電する。出力340キロワットの水力発電機だ。
仕組みは、余剰圧力を利用する。金町浄水場(葛飾区)から送水された飲み水は、葛西給水所を経由してさらに約15キロ先の東海給水所(大田区)まで運ばれる。そのため、あらかじめ高い水圧で水が送り出されていて、途中の葛西では発電できるほどの水流の勢いがあるのだ。
「昨年度の発電量は、一般家庭390軒分に相当する127万キロワット時。新電力のエネットが買い取り、4500万円程度の売電収入がありました。設備投資額の2億6千万円はこのままいけば約6年で回収し、その後は黒字化する予定です」(東京都水道局水運用センター村山孝之課長)
東京都は24年までに、再生可能エネルギーの利用割合を20%程度に増やす。水道局でも太陽光発電や廃熱利用(コージェネレーション)を進めるが、その中に小水力がある。現在、6カ所の浄水場や給水所に合計2200キロワット以上の水力発電設備を設置し、13年度は519万キロワット時を発電した。今後はさらに6カ所で小水力発電を始める予定だ。
東京都以外に、山梨県都留市、高知県梼原町も小水力発電に取り組んでいる。また、横浜市や川崎市など、民間に運営を任せる民設民営方式で小水力発電を行う自治体は多い。
小水力発電のハードルは低くなった。だが、「設置前の流量調査に数年必要」(全国小水力利用推進協議会の中島大事務局長)ともいわれ、すぐに始められるものでもない。長期的な計画が必要だ。
※週刊朝日 2015年10月30日号