2015/08/18
富山県は3000メートル級の山々を水源にして豊富な水量に恵まれている。古くから稼働を続ける大規模な水力発電所に加えて、農業用水路などを活用した小 水力発電の取り組みが活発に進む。温泉の地熱を利用した植物工場や、地域の森林資源を生かしたバイオマス発電所も動き始めた。
[石田雅也,スマートジャパン]
富山県が2014年度に策定した再生可能エネルギービジョンには、6つの重点プロジェクトが盛り込まれている。その1番目が「水の王国とやま小水力発電導入促進プロジェクト」である。2021年度までの8年間で20カ所以上に小水力発電を導入することを目標に掲げた。
新しい小水力発電所の1つが2015年3月に運転を開始した「小摺戸(こすりど)発電所」である(図1)。富山県の東部を流れる黒部川から引き込 んだ長い用水路に建設した。取水口から発電所までは600メートル以上もあり、その間を地中に埋設した水圧管路でつないでいる。
最大で毎秒8立方メートルの水を用水路から取り込み、6.3メートルある落差を生かして発電する。発電能力は370kW(キロワット)で、年間の 発電量は280万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して780世帯分に相当する電力を供給することが できる。
同じ用水路の上流には、1920年代に運転を開始した大規模な水力発電所が3カ所にある。「黒東(こくとう)第一・第二・第三発電所」で、いずれ も時期は不明ながら途中で廃止になり、1993年に北陸電力が再開発した。3カ所の発電能力を合計すると2万kWを超えて、年間の発電量は1億5000万 kWhにも達する。実に4万世帯分を上回る電力源になっている。
こうして大小の水力発電所が効率的に電力を供給する中で、さらに小規模な水力発電の取り組みもある。空調メーカーのダイキン工業が環境省の事業の 一環で実施したもので、エアコンのインバーター技術などを応用した「ポンプ逆転水車」を利用する(図2)。通常は水圧の調整に使うポンプを逆回転させて発 電する仕組みだ。
横幅がわずか93センチメートルのコンパクトな設計になっていて、狭い場所にも設置できる。実証実験の場所は富山県の西部にある南砺市(なんと し)の「森清(もりきよ)配水池」の水道設備を利用した。水道管を流れる水の勢いでポンプ逆転水車を回転させて、水車の上部に搭載した発電機で電力を作る ことができる(図3)。
発電能力は15kWで、年間の発電量は10万kWhになる。一般家庭で27世帯分に相当する小さな規模だが、発電能力は最大で22kWまで高める ことが可能だ。ポンプには量産品を使うことができるため導入コストが安く済み、小水力発電で課題になる採算性の面でも有利である。同じシステムを使った実 証実験は福島県の相馬市でも2015年7月から始まっている。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1508/18/news023.html
タグ:富山県