2014/06/02
中部電力が岐阜県のダムで展開する小水力発電プロジェクトの第2弾が始まった。従来から水力発電に利用しているダムの直下に新しい発電所を建設して、 470世帯分の電力を供給できるようにする計画だ。ダムからの維持流量を活用して、88%という極めて高い設備利用率を発揮する。
[石田雅也,スマートジャパン]
ダムや用水路などの既存の水流を活用した「従属発電」が、2013年12月の河川法の改正によって登録手続きだけで実施できるようになった。法改 正を受けて、いち早く岐阜県で2件の従属発電を登録したのが中部電力である。その2番目の対象になる「矢作第二ダム」で、5月29日から発電所の建設工事 が始まった(図1)。
矢作第二ダムは中部電力が1970年から運営してきた。翌年の1971年から出力3万1600kWの「矢作第二発電所」を運転するのに利用してい る。さらにダムの下流の自然環境を守るために一定の水量を流し続ける「維持流量」を実施しているが、これまでは発電に利用してこなかった。
新たにダムの直下に発電所を建設して、維持流量による小水力発電を開始する計画だ(図2)。ダムからの取水設備と水圧管路を通して、発電所内の水 車発電機に水流を取り込んで、発電後には放水設備から維持流量を下流へ送り出す。ダム直下型の典型的な発電設備である。ダムの近くには1920年から 1968年まで運転していた「串原発電所」があったことから、「新串原(しんくしはら)水力発電所」と名付けられた。
営業運転は1年後の2015年6月に開始する予定だ。発電能力は220kWで、年間の発電量は170万kWhを想定している。一般家庭で470世 帯分の使用量に相当する。維持流量を利用して安定した発電量を得ることができ、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は88%に達する。
小水力発電の設備利用率は60~70%が標準的だが、水量が安定している維持流量による従属発電は設備利用率が高くなる。その中でも新串原水力発電所の88%は極めて高い水準だ。
中部電力は岐阜県の従属発電の登録対象で1番目になる「阿多岐(あたぎ)水力発電所」の建設工事も5月1日に開始していて、新串原水力発電所と同 様に2015年6月から営業運転に入る。阿多岐水力発電所は発電能力が190kWで、年間の発電量は130万kWhを見込んでいる。設備利用率は78%に なり、新串原水力発電所と比べると低くなる。