2014/05/21
山口県の北部を流れる阿武川の途中に、水量を調整するための小規模なダムがある。そのダムから取り入れる落差4メートルに満たない水流を使った小水力発電所が運転を開始した。「サイフォン式」の取水設備を導入して、低い落差でも発電用の水量を増やすことができる。
[石田雅也,スマートジャパン]
山口県の内陸部から日本海に流れる阿武川(あぶがわ)には、大規模な阿武川ダムがあって、県営の新阿武川発電所が1万9500kWにのぼる大量の 電力を供給している。その阿武川ダムから下流に5キロメートルほどの場所に「相原ダム」がある(図1)。河川の水量を調整するための小規模なダムで、下流 との高低差はわずかしかない。
その低い落差の水流を利用した小水力発電所が5月18日に運転を開始した。山口県の企業局が運営する「相原発電所」で、発電に利用できる水流の落 差は最大でも3.87メートルである。低い落差から最大限の水量を発電設備に取り入れるために、「サイフォン式」と呼ぶ取水設備を採用した。
サイフォンの原理は管でつないだ2カ所のあいだで、圧力によって液体が低い位置から高い位置へ流れる現象である。コーヒー用のサイフォンが有名だが、小水力発電でも落差の小さい水流を効率よく取り入れる方法として利用することができる(図2)。
相原発電所ではサイフォン式の取水設備を活用して、毎秒3.2立方メートルの水流を水車に送り込み、82kWの電力を供給することが可能だ(図 3)。年間の発電量は33万kWhになり、一般家庭で90世帯分の電力に相当する。発電した電力は全量を中国電力に売電して、年間に1100万円程度の収 入を得ることができる。事業費は1億3500万円で、運転維持費を加えても買取期間の20年間で利益を見込める。
山口県は再生可能エネルギーの導入を促進するためのモデルとして相原発電所を建設した。県営では初めての小水力発電所である。今後さらに県内の各地に小水力発電を広めていく計画だ。
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1405/21/news023.html