小水力の規模は何kW?

1,000kW以下が、小水力

世界的には各国統一されておりませんが、概ね「10,000kW以下」を小水力と呼んでいます。
ESHA(ヨーロッパ小水力発電協会)でも、「10,000kW以下」を小水力として扱っています。
IEA(国際エネルギー機関)の水力実施協定では、特に定義せず、ダムなどの大規模開発などが伴わない環境に配慮したものとして扱っています。

日本の電力業界では、従来から「10.000kW以下」を小水力としてきました。
NEDOのガイドブックでは、「10,000kW以下を小水力」、「1,000kW以下をミニ水力」、「100kW以下をマイクロ水力」などと分類していますが、この呼び方はほとんど定着していません。

一方、日本の法律では、1,000kW以下と1,000kWを超える水力が明確に区分されています。 1,000kW以下の水力発電は、新エネルギー法(*1)の施行令改正(2008年4月施行)により、「新エネルギー」に認定されています。 RPS法(*2)では、1,000kW以下の水力発電は、RPS法の対象となっています。 (*1) 新エネルギーの利用等の促進に関する特別措置法、1997年6月施行 (*2) 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法 2003年4月施行

以上の法律上の区分や、今後の水力開発の在り方などを踏まえ、本ページ「小水力とは?」では「1,000kW以下」を「小水力」として扱うことにします。

小水力とは?

小水力は環境配慮型です。

発電方式の分類では、「流れ込み式」、または「水路式」となります。大規模ダム(貯水池式)、中規模ダム(調整池式)ではなく、河川の水を貯めること無く、そのまま利用する発電方式です。
一般河川、農業用水、砂防ダム、上下水道など、現在無駄に捨てられているエネルギーを有効利用します。

現在、国内市場は、ほとんどありません。

これまでは、大中型中心の水力市場で、小水力の市場はありませんでした。
現在、やっと芽が出て、育ち始めている段階です。
近い将来、大きな市場の延びが期待できます。

小水力技術は、小水力独自の技術です。

大中水力技術の簡易型、機能省略、縮小版ではありません。
小水力独自の技術開発、育成、拡大が必要です。

小水力開発は、地域密着型です。

地域の、地域による、地域のための開発です。
地元のコンサルタント、地元の施工業者、地元業者による保守管理などで、地域の活性化、地域の雇用促進にも有効です。

小水力の事業主体は、地方自治体、土地改良区、NPO、民間、個人です。

これまでの電力会社主体の開発とは異なり、多様な事業主体が実施しています。

小水力の特徴(太陽光、風力との比較)

  • 昼夜、年間を通じて安定した発電が可能です。
  • 設備利用率が50~90%と高く、太陽光発電と比較して5~8倍の電力量を発電できます。
  • 出力変動が少なく、系統安定、電力品質に影響を与えません。
  • 経済性が高い。(ただし、小水力は地点毎に経済性が異なります)
  • 未開発の包蔵量がまだまだ沢山あります。(全国小水力利用推進協議会では、1,000kW以下の未開発包蔵水力を300万kWと概算しています)
  • 設置面積が小さい。(太陽光と比較して)
  • 設置地点が限られる。(落差と流量がある場所に限定される)
  • 水の使用について、利害関係が付きまとう。 (風や太陽光には、利害関係ほとんどなし)
  • 法的手続きが煩雑で、面倒である。 (特に河川法。大規模水力計画と同じ手続きが要求される)
  • 太陽光や風力に比べ、法的な規制や多くの申請を必要とする場合がある。
    (注:2013年7月現在、電気事業法や河川法の一部で規制緩和が進んでいます)
  • 2つの要素(落差と流量)による機器開発が必要である。
  • 同じ再生可能エネルギーでも、小水力に関する一般市民の認知度が低い。

どんなところで出来るか?

基本的に落差と流量のあるところであれば、場所は問いません。

一般河川

山間部には、まだまだこのような場所がたくさんあります。河川の環境に配慮しながら、エネルギーの有効利用を図りましょう。

砂防ダム、治山ダム

河川からの取水、および落差を、このような既設の構造物を利用すると経済的です。

農業用水路

落差が大きいが流量は少ない、落差は小さいが流量は多いなど、地点によりそれぞれ異なりますが、落差が大きく、流量も豊富な場所も少なくありません。数百kW程度の発電が可能な地点もあります。

上水道施設

落差が大きいところは、減圧弁を使用してエネルギーを捨てています。この減圧弁の代わりに小水力発電設備を入れることができます。数百kW程度のポテンシャルを持ったところも少なくありません。

下水処理施設

一般的に落差が低いため、あまり大きな発電出力は期待できませんが、数十kW程度発電できるところもまだまだあります。

ダム維持放流

河川環境を維持するための放流ですが、この放流水を利用して発電する方法です。

既設発電所の放流水

発電所で使用した水は河川に放流されますが、この間の落差を利用して発電するものです。

ビルの循環水、工業用水

工場やビルの循環水や、工業用水を利用した発電です。

小水力開発の特徴とポイント

  • 開発可能な包蔵水力は、地域により差がある。

    平野の市町村と、山間部の市町村では大きな差があります。
    ポテンシャルの乏しい市町村では、無理に小水力開発を行う必要はありません。

  • 地点毎に経済性が異なる。

    NEF(新エネルギー財団)のハイドロバレー開発計画調査でも、kWhあたりの建設単価で、50円/kWh~1,000円/kWhの違いがあります。
    例えば、同じ100kWの発電設備でも、総工事費がA市では5,000万円、B町では1億円掛ることがありますが、これは当然起こりうることで、不思議なことではありません。

  • 地点毎に法的手続きの難易度が異なる(特に河川法)。

    一級河川からの取水と、普通河川からの取水では、その手続きの難易度には雲泥の差があります。
    農業用水路でも、取水する河川の種別や、既得水利権の種類(許可水利権、または 慣行水利権)で手続きの難易度が異なります。

  • 技術的問題はほとんど無きに等しい。

    水力発電技術は、ほとんど確立されているため、技術的問題で開発が出来ないということはありません。
    ただし、工夫や改善の余地はまだまだ沢山あります。

  • 経済性が重要です。経済性の良い地点から開発する。

    環境PR、教育目的だけでは行き詰ります。
    売電収入や電気料金削減費用により、維持管理できることが重要です。

  • 法的手続きの容易な地点から開発する。

    特に河川法の許認可手続きには、多大な費用、時間、労力が掛ることがあります。

  • 支援制度、補助金制度を活用する。

    相談など:一般社団法人小水力開発支援協会の相談窓口
    支援制度:経産省、環境省、農水省、各自治体により調査補助、事業化支援制度など
    補助金制度:経産省、環境省、農水省などの建設費補助

  • 関係各所、地域住民との合意形成が大事です。

    効率的な開発推進、維持管理には、地元の理解と協力が不可欠です。

導入ステップ(地点の発掘から完成まで/地方自治体が小水力を導入する場合)

・一般河川、農業用水路、砂防ダム、上下水道などで小水力発電に有望地点を
 抽出する。
・現地調査を行い、経済性、実行性のある地点を選択する。
・コンサルタント業者の入札、決定
・基本設計を実施(測量、流量測定、概略図面の作成、工事費の算出等)
・地元住民への説明
・河川法許可手続きの事前説明
・コンサルタント業者の入札、決定
・施工図面の作成、特記仕様書、設計書の作成
・河川法の許可申請
・施工業者の入札、決定
・工事計画の届出、主任技術者選任、保安規程の届出等
・土木工事、機器据付け工事、試験調整、完成

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