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2013/11/12

信州・取材前線:進む小水力発電計画(その1) 住民中心に出資、収益は住民のために−−飯田・上村地区 /長野【毎日新聞:2013/11/09】

 地域住民が自己責任で小水力発電に乗り出し、売電収益を自主財源として地域住民のために使う。2018年度の運転開始を目標に飯田市上村地区では、前例のない事業が進められている。再生可能エネルギー資源を生かした地域づくりを掲げる市も支援しているが、主役は約500人の上村住民。年間約1000万円と見込む純利益を子育て支援や高齢者支援などに充て、人口減少が続く地域の活性化を図ろうとしている。【横井信洋】
 ◇前例ない事業、18年度目標に 年間1000万円の純利益 続く人口減少、地域活性化へ

 きっかけは、上村程野地区の小沢川を含む市内5カ所で、市が委託した小水力発電の事業化の可能性を探る調査。川の水量や落差などから小沢川が有望と判断された。市の働きかけで10年度から程野地区の有志が勉強会を始め、上村全体の取り組みとするとともに、上村小水力発電検討協議会に拡充した。

 最大出力147キロワットの発電所を建設し、年間の発電量を96万5000キロワット時と想定。再生可能エネルギーによる電気の全量固定価格買い取り制度を利用した年間の売電収益を約3400万円、経費を差し引いた純利益を約1000万円と見込む。現在実施中の詳細な調査に基づき、来年1月までに発電量や建設費などを確定させ、13年度中に地区全体の合意形成を図る予定。14年度には組合や株式会社などの事業主体を設立し、2年後の運転開始を目指している。

 必要な資金は住民を中心とした出資金と借入金で調達する。市の支援は、今年4月に制定した再生可能エネルギーの導入による持続可能な地域づくり条例に基づく無利子資金の貸し付け▽地域事業として認定することによる対外的な信用補完▽専門家チームによる助言−−など。金融機関からの借り入れに対する債務保証まではしない。

 市は当初から、市の事業ではなく、リスクを負うコミュニティービジネスとして進めるべきだと考えていたという。市地球温暖化対策課地域エネルギー計画係の小川博係長は「議会の理解を得られないし、従来の公共事業や第三セクターと同じになってしまう」と説明する。

 検討協議会の会長を務める前島忠夫さん(77)は旧飯田市内の高校を卒業した後は上村を離れていない。キノコ栽培を始めてから50年以上になる。「林業も衰退し、上村には何もない」と危機感を抱く。05年の飯田市との合併後も人口減少は続き、小水力発電にかける思いは強い。定年後に上村へ戻った副会長の前島久光さん(79)も同じ思いを抱く。

 課題の一つは住民全体の理解を深めること。程野を含む上村の4地区では温度差もある。前島会長は「全額を借金で賄ってでも早く形を見せたほうがいいのではないか」とスケジュールの前倒しに言及する。再生可能エネルギーによる地域づくりの成功例を示すという目標は市と同じだが、小川係長は「リスクが大きい」と前倒しには慎重だ。

 売電収益の使途として前島会長らは自治会費の肩代わり、家賃の補助や給食費の無料化など子育て世代や定住希望者への支援、高齢者の負担軽減などを考えている。小川係長は持続可能な地域づくりのために、行政サービスの補完的な使い方にとどめず、将来への投資が重要になると指摘。上村の情報を発信できる外部の人材や発電事業の拡大に向けた投資などを挙げる。

http://mainichi.jp/area/nagano/news/20131109ddlk20040038000c.html

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