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2016/03/20

売電収益 多彩に還元 6次化後押し 草刈り日当に 山間部、過疎・高齢地域 【日本農業新聞】

2016年3月20日
 小水力発電や太陽光発電を行い、売電収益を地域活動の財源に活用する集落が出てきた。大分県竹田市では、農家らが小水力の売電収益を営農組合の6次産業化の資金に充てる。岡山県吉備中央町では高齢者の買い物支援や草刈りなど、売電収益を集落維持に活用する。いずれの地域も、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を生かし、農村の活性化を目指している。
 大分県竹田市の土地改良区宮ケ瀬工区は昨年夏、農業用水路を活用し小水力発電所を建てた。同制度で九州電力に売電した収益を財源に、地域農業の存続を目指す。
 同区は、農家46人が20ヘクタールで米を作付ける。平均年齢は70歳を超えるが、区長の渡部修身さん(61)は「売電で山間部に長期継続的に所得がもたらされる。農業が厳しい中で集落に収入が生まれるのは大きな利点だ」と喜ぶ。
 初期投資は4200万円。県の補助(1150万円)以外は全額、融資を受けた。発電量は1カ月約1万2000キロワット。九州電力に売電する収益は1カ月30万円弱に上る。
 売電収益は、地元の農事組合法人・紫草の里営農組合の運営資金に充てる予定。同法人は、地元で古くから栽培するムラサキ科で多年草のムラサキ(紫草)を使い染色したストールなどを売り出す6次産業化に取り組む。販路開拓に資金が不足したため、売電収益を活用する。この他、水路掃除など日当や改修費に充てる計画だ。
 同組合の代表、佐藤征年さん(72)は「地域は現金収入が乏しかった。売電収益で販路を広げ、交流人口を増やしたい」と笑顔で話す。
 岡山県吉備中央町の旧高富小学校区の住民でつくる「みんなで支え合う地域づくり協議会」は昨年、50キロワットの太陽光発電事業を始めた。売電収益は、高齢者の買い物支援や草刈りをする住民の日当などに活用する。代表で農家の草地明保さん(82)は「収益を元手に住民同士が支え合い、集落を守る事業をしたい」と見据える。
 売電収益を地域振興に役立てる動きは全国に広がる。兵庫県丹波市の山王自治会は、太陽光発電で、農産物の加工品開発や集落維持の財源に活用している。鳥取市の「市民エネルギーとっとり」は、出資者を募り牧場の屋根などに太陽光パネルを設置。売電収益で県内の米や野菜などを購入し、出資者にお返しする仕組みで、地域経済の活性化を目指す。(尾原浩子)

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