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2015/01/14

「名水の里」が取り組む小水力発電のポテンシャルとは【gooニュース】

 河川や農業用水など“小さな水流”でも利用可能な小水力発電。設置面積も小さく、コストを低く抑えられ、さらに発電に利用した水を元の河川に戻すうえ、発電時にCO2を排出しないため、環境負荷が極めて少ないクリーンな発電方法とされている。

 そもそも水力発電のエネルギー変換効率は80%にも及び、火力や原子力など他の発電方法と比べても高い。降水量などの要因で水量が増減するものの、昼夜を問わず発電できることから、太陽光や風力と比べ発電出力が安定しているのも特長だ。

 国や都道府県が管理する1、2級河川だけでも2万以上にのぼるなど、河川や用水路の多い日本ではポテンシャルの高い自然エネルギーとされている小水力発電。そんな小水力発電に取り組む地域のひとつに山梨県北杜市がある。今回は、小水力などの自然エネルギーを活用して地域でエネルギーの自給自足を目指す北杜市の取り組みを取材した。

●豊富な水資源を生かして“クリーンな電気”を生む町

 山梨県の北西部に位置する北杜市は豊かな自然資源を次世代に引き継ぐため、エネルギーの地産地消と地球温暖化の防止を目指すなど、環境対策に力を入れている。例えば、日本一と言われている日照時間の長さという地域の特長を活かして太陽光発電事業に積極的に取り組んでいるのも、そうした活動の一環。さらに、より注目すべき取り組みは、八ヶ岳山麓の豊富な水資源を生かした発電事業だ。

 環境省の「名水百選」「平成の名水百選」では同市からは3カ所が選定されている。また、全国のミネラルウォーターの約3割を生産し、サントリー白州蒸留所が立地するなど、日本屈指の名水の里として知られる。

 そんな豊富な水量と急峻な地形を利用した小水力発電プロジェクトが「北杜市村山六ヶ村堰ウォーターファーム」だ。同プロジェクトは農業用水路の「村山六ヶ村堰」に 村山六ヶ村堰水力発電所を建設するもの。同堰は、八ヶ岳から流れ出る川俣川から取水し、16km余りの区間で農地への灌漑と生活用水に利用されている農業用水路。

 同プロジェクトで建設された市営の「北杜市村山六ヶ村堰水力発電所」は、山の中で農地がなく農業用水として使用していない区間を利用。上流の取水口から同堰に並行して埋設された直径60cmの水圧管で、最大の高低差85mという急峻な地形を利用して1.27km下流の発電所まで水を送り、水の流れ落ちる力だけで発電している。発電に使用した水は全て元の水路に戻る仕組みだ。

 自家消費を基本とする同発電所は、2007年4月から発電を開始。年間の推定発電量は240万kW/hほどで、約650世帯の電力を賄える発電量だ。これにより年間で約900トンのCO2排出を抑制できるという。また、ここで発電した電力は地域の飲料水をつくる近隣の大門浄水場に供給され、建物の照明や送水ポンプ、空調などに使用されている。

 同プロジェクトでは新たな発電所の導入を加速するため、開発地点を同一水系に絞ることを事業方針としており、北杜市と民間のパートナーである、小水力発電に50年の歴史を持つ三峰川電力株式会社(丸紅グループ会社)の協働で事業が進められている。市の生活環境部・環境課・新エネルギー推進担当者は、「民間ができることは民間に任せるというのが、市の基本的なスタンス。我々は許認可取得や手続き、住民への説明など地元への橋渡しで支援していきたい」と話す。

 その後、新たに建設された3発電所(合計出力650kW)は12年4月に発電を開始し、三峰川電力が運営している。市営を含む4発電所の年間の推定発電量は7,000MW/h。発電電力は北杜市世帯の10%に当たる約2千世帯の年間電力消費量に相当する。

 「村山六ヶ村堰の発電事業は立地条件が整っていたため、計画から運営まで短期間で実現できました。市は小水力発電所を増やす方向で取り組んでいますが、200~300kW規模の発電に適していて、条件のいい場所となると、なかなかありません。10~20kWほどの小規模であれば候補地はあるので、小規模な設備を積み上げていくか、ある程度の規模が見込める条件のいい場所に絞るか、現在は検討中です。」(前出・市担当者)

 市担当者が指摘するように、小水力発電の事業化に関してはそれなりの「ハードル」が残っている。地域の、そして日本のエネルギー自給率を上げるためにも、これまで以上に制度改正や資金援助など事業化のハードルを下げる施策が必要なのではないだろうか。

http://news.goo.ne.jp/article/dot/bizskills/dot-2015011400036.html?fr=rk

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