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2018/06/14

地域支える小水力発電 多気・勢和で6年かけ安定供給【中日新聞】

2018年6月2日 掲載
多勢和地区を流れる立梅用水(たちばいようすい)を活用した全国でも珍しい地産地消型の小水力発電装置「彦電」が先月下旬、本格稼働を始め、地域での電力利用がしやすくなった。二〇一二年七月から産学官民協働で開発してきた。機械の故障や、十分な発電量が得られない時もあったが徐々に安定。時を経て動きだした事業に、住民や立梅用水土地改良区は「待望の施設がようやく使えるようになった」と喜ぶ。
 発電機は、波多瀬で農産物の加工製造などをしている「元丈の里ゆめ工房」近くの用水路に設置されている。用水の落差五十センチを利用し、最大毎時五百ワットを発電。公募で決めた「彦電」の愛称は立梅用水を整備した江戸時代の地元の偉人、西村彦左衛門に由来する。
 水利使用者の立梅用水土地改良区が水路や発電機を管理し、地元の自治会などでつくる勢和地域資源保全・活用協議会も協力している。これまでには、ゴミが発電機に流れ込み、発電効率が落ちたり、故障につながったりしたこともあった。土地改良区などはゴミを取り除くオイルフェンスを用水路近くに置くなど、周辺環境を整えてきた。
 六年前の設置以来、改良を重ねた発電機は、二つのプロペラが反対方向に回転することで相対速度が上がる方式で、わずかな落差でも効率的に発電できる。国の補助金を得て東京の協和コンサルタンツが九州工業大と開発した。一機約三百五十万円だが、同社の実証実験も兼ねていたため、地元の費用負担はなかった。
 先月下旬、同社が電力の安定供給を確認し、供用開始を宣言。発電した電力は、ゆめ工房内に設置された蓄電池に蓄えられ、波多瀬の自治会が用水沿いに付けた発光ダイオード(LED)防犯灯や、ゆめ工房の低温庫で利用されている。
 土地改良区の野呂郷武理事長(73)によると、用水路を活用した小水力発電は売電が主で、地産地消型は珍しいといい、「苦労もあったが、地域の皆さんに安定して使ってもらえるようになった」と喜ぶ。波多瀬区の高橋展生区長(66)は「地域の関心が高い事業だった。時間はかかったけれど本格稼働はうれしい」。
 元丈の里営農組合加工部の薗井忠一部長(70)は「低温庫は四六時中電気を使う。少しでも電気代が助かる」と喜ぶ。丹生の一般社団法人ふるさと屋の中西真喜子代表理事(69)は「獣害パトロールを行っている電気自動車(EV)の充電などに役立てたい」と話した。
 (古檜山祥伍)

http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20180602/CK2018060202000028.html

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