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2013/08/09

北陸電力が水資源生かし安定供給へ水力発電量増強に力 【電気新聞:2013/08/01】

 北陸電力は、水力発電の発電電力量増加に積極的に取り組んでいる。水車ランナー(羽根)の取り換えなど既存設備の改修によるものについては、2010年から現在までに12カ所で合計4690キロワット、年間1740万キロワット時の増加を図った。これら設備改修のほかにも、効率裕度の活用や取水増による出力増加など手法は様々。「原子力の再稼働が不透明な中、今ある発電所をきちんと運用していくのはもちろん、あらゆる面で出力を増やす取り組みを続けていく」(舟木聡支配人・土木部水力室長)構えだ。(山田雄二郎)

 ◆厳しい需給貴重な戦力に

  急峻な河川と豊富な水量に恵まれた北陸地域にあって、北陸電力の水力発電比率は年間発電量ベースでおおむね24〜26%と全国で最も高いレベル。発電所数は129カ所、合計出力は約190万キロワットに上る。

◆8千万キロワット時増

 同社は、「2008緊急経営対策本部」でまとめた再生可能エネルギー導入拡大策の一環として、「08年度から20年度までに約30カ所で約8千万キロワット時の発電量増加(07年度比)」を目指し、現在、河川維持放流水の活用や新規開発、既存設備の出力増に取り組んでいる。

 このうち、河川維持放流水の活用では、10年以降3カ所で実施。最近では昨年12月に新猪谷ダム発電所(岐阜県、500キロワット、年間発生電力量400万キロワット時)が運転を開始。来年11月には北又ダム発電所(富山県、130キロワット、同90万キロワット時)が運開予定。

 新規地点の開発では、北陸電力グループとして27年ぶりとなる片貝別又発電所(富山県、4400キロワット、同1740万キロワット時)が16年5月の運開を目指し、今年5月に着工したところだ。

 一方、出力増の事例で最も数が多いのが、既存設備の改修。発電機や水車ラン ナーの経年変化伴う更新に合わせて出力増を図る場合が多い。最近では今年5月 に新猪谷発電所(岐阜県飛騨市)で水車ランナーと発電機固定子の取り換えに伴い、出力を1900キロワット増加させ3万5400キロワット(増分の年間発 生電力量470万キロワット時)とした。6月にも九谷発電所(石川県加賀市) で2号機の水車ランナーを取り換えて出力を100キロワット増加させ2千キロ ワット(同30万キロワット時)とした。

 設備改修以外にも、5月の滝波川第一発電所(福井県勝山市)のように、水 車・発電機の性能確認試験を実施した上で200キロワット増の1万2500キ ロワット(同30万キロワット時)としたり、同じく5月の神通川第二発電所 (富山市)のように、最大取水量を増やすことで出力を3千キロワットも増加さ せ4万4千キロワット(同600万キロワット時)とした実績もある。

◆小さな積み重ね  

 個別には数百キロワットから数千キロワットと、全体の規模から見れば決して 大きな数字ではないかもしれない。しかし小さな数字も積み重ねれば大きなボ リュームになるし、原子力停止が長期化し電力需給に余裕がない現在の状況で は、安定供給の上でも重要な戦力となる。

 豊富な水力資源を生かした低廉で良質な電気の供給は、北陸電力の大きな強み の一つだ。舟木室長は「水力は手を掛ければ100年以上現役であり続ける。先 人の大変な努力で建設されてきた設備をしっかり維持し運転していくとともに、 少しでも出力を増やせないか努力することが我々の使命」と言い切る。

 志賀原子力の敷地内シーム(破砕帯)問題など予断を許さない経営環境が続く 中で、北陸電力の水力の現場では日々、安定供給確保のための懸命な取り組みが 続いている。  新猪谷発電所では水車ランナー(写真)と発電機固定子の取り換えに伴い、 1900キロワットの出力増を図った。

※紙面より転載

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